欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2023/3/6

EU情報

EU公認環境債の規則、加盟国と欧州議会が合意

この記事の要約

EU加盟国と欧州議会はこのほど、EUの基準を満たした環境債「欧州グリーンボンド(EUGB)」の発行に関する規則案で合意した。それぞれが合意案を持ち帰り、承認した上で発効する。グリーンボンドに関する基準を設けるのは世界初と […]

EU加盟国と欧州議会はこのほど、EUの基準を満たした環境債「欧州グリーンボンド(EUGB)」の発行に関する規則案で合意した。それぞれが合意案を持ち帰り、承認した上で発効する。グリーンボンドに関する基準を設けるのは世界初となる。

調達した資金の使途を環境改善効果のある事業に限定するグリーンボンドの発行は、環境意識の高まりを受けて世界的に急増しているが、明確な規則、基準はない。欧州委は2021年7月、企業などが実際には環境改善に取り組んでいないのに、そのように見せかけて投資家をミスリードする「グリーンウォッシング」が横行していることなどから、明確な基準を設け、それを満たしたグリーンボンドをEUGBとして認定する制度の導入を発表。規則案を提示していた。投資家が環境問題で信頼できる投資先を簡単に特定できるようにし、EUのグリーンボンド市場を底上げする狙いがある。

加盟国と欧州議会が2月28日夜に合意した規則案によると、EUGBの発行体(企業、政府機関など)は、調達した資金をEUタクソノミー(気候変動など環境問題の解決に貢献する持続可能な経済活動を6つの目的に分類したEU独自の基準)を満たした事業に投資しなければならない。ただし、タクソノミーに沿いながらも、明確な基準が整備されていない分野に最大15%を活用することも認める。

このほか、発行体は調達した資金の使途や、包括的なグリーントランジション(環境配慮や持続可能性のある社会への移行)計画への活用などに関する情報公開を求められる。外部監査を受ける必要もある。

EU域内だけでなく、域外の発行体もEUが定める基準を満たせば発行する債券をEUGBと名付けることができる。

欧州委案では発行体に規則順守を義務付ける方針だったが、最終的に自主的な順守を求めるにとどめた。厳しい規制を導入すると、グリーンボンドの発行件数が減る恐れがあることを考慮したとみられる。

欧州議会によると、世界ではグリーンボンド発行による調達額が21年に初めて5,000億米ドルを超えた。債券市場全体の3%程度に過ぎないが、急増しており、前年を75%上回る水準だ。EU域内での発行が51%と過半数を占める。

EUのサステナブルファイナンス(持続可能な金融)の専門家グループによると、世界で発行されるグリーンボンドのうち、現時点でEU基準を満たすのは3%未満という。