英アームが米で単独上場へ、英市場は見送り

ソフトバンクグループ(SBG)傘下の英半導体設計大手アームは3日、年内に米国市場への単独上場を目指すと発表した。英政府はロンドン証券取引所への上場を働きかけていたが、市場規模が大きい米国を選んだ。ハイテク分野の有力企業が自国での新規株式公開(IPO)を避けたことで、EU離脱後に低迷する英市場の存在感がさらに低下する恐れがある。

アームのレネ・ハース最高経営責任者(CEO)は声明で「年内に米国での単独上場を目指すことが、当社と利害関係者にとって最善の道だと判断した」と表明。そのうえで、英ケンブリッジの本社を維持するとともに、イングランド南西部ブリストルに新たな拠点を設けて雇用を創出し、将来的に英国での上場も検討すると説明した。

アームの発表を受け、英政府の報道官は「英国での事業を拡大し、雇用や投資を推進するとのアームのコミットメントに注目している」とコメント。英国は欧州の主要な投資拠点として、上場規則の見直しをはじめとする金融資本市場の改革に取り組んでいると強調した。

アナリストらはアームが上場先として米国を選んだことで、英市場の地盤沈下が加速する可能性があると指摘する。英投資顧問会社 AJベルの財務分析責任者ダニ・ヒューソン氏は「米国で大規模な事業を展開する企業にとって米国での上場は理にかなった動きだが、世界有数の金融センターであるロンドンに対する不満がさらに高まっていることを示唆している」と指摘。英ベレリオン・キャピタルの創業者イアン・マクドナルド氏は「アームがニューヨークを選んだことに驚きはない。アームのような企業が米国に上場しなければ、単に資本力のある米国のライバル企業に買収されてしまうだろう」と述べ、市場流動性の低下や成長企業に対する支援の縮小が英株式市場の低迷を招いているとの見方を示した。

SBGは2016年に約3兆円でアームを買収した。20年9月にはアームを米半導体大手エヌビディアに最大400億ドルで売却すると発表したが、米英やEUの競争当局の承認を得ることは困難と判断し、22年2月に売却を断念。アームへの投資を回収するため、同社を上場させる方針を表明していた。

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