スウェーデンのパーソナルケア用品大手エシティは9日、製造工程で二酸化炭素(CO2)を一切、排出せずに製紙を行うことに成功したと発表した。再生可能エネルギー電力に加え、グリーン水素を投入することで実現した。製紙に水素を投入するのは世界初。同社は今後、グリーン水素インフラが整備されるなど環境が整った地域の工場でも同様の取り組みを進める意向だ。2050年までの炭素中立実現を目指している。
ドイツ南部のヴィースバーデン市マインツ・コストハイム地区にある工場でパイロットプロジェクトを行っている。18年に構想を練り始め、21年から必要な設備の設置を開始。先月14日にCO2無排出の製紙に量産ベースで成功した。
グリーン水素は紙の乾燥工程で投入する。同工程では600度の高温が必要となるが、電力では実現できないことから、これまでは天然ガスを使用してきた。これをグリーン水素に置き換えることでCO2の排出を完全に回避することに成功した。
コストハイム工場のCO2排出量はこれにより最大で年3万7,000トン削減できる。同工場の排出量の約3分の1に相当する規模だ。
エシティは同プロジェクトに400万ユーロを投資したほか、地元ヘッセン州から補助金140万ユーロの交付を受けた。同州のタレク・アル・ワズィール経済相は「エシティは製紙産業で持続可能な生産が可能であり、またエネルギー集約度の極めて高いプロセスをグリーン水素で環境に優しく行えることを示した」と称賛した。