銀行の損失負担は「株主から」、クレディスイスの「AT1債無価値」受けECBなど声明

経営危機に陥っていたスイス金融大手クレディ・スイスが同業のUBSに救済買収されるのに伴い、スイス金融市場監督機構は19日、クレディ・スイスが発行した「AT1債」と呼ばれる債権160億スイスフラン(約2兆3,000億円)の元本をゼロとする措置を発表した。欧州の金融監督当局は市場の動揺を抑えるため、典型的な減損処理のシナリオでは、債券保有者の前にまず株主に損失負担を求めることになると表明した。

AT1債は劣後債の一種で、2008年の金融危機で銀行の救済に多額の公的資金が投入された反省から、銀行が自己資本の不足に備えて導入が進んだ。発行した銀行の財務が悪化した場合、普通株に転換するなどして自己資本に組み入れることができる。クレディ・スイスのAT1債には、同行が経営危機に陥った場合、スイス当局が減損することを認める条項が含まれており、スイス政府はUBSに政府保証などの支援策を提供するのと引き換えに、AT1債を無価値とすることで投資家の損失負担を明確にした。

市場関係者によると、AT1債の発行条件に元本をゼロにすることを可能にする条項が含まれているのはクレディ・スイスとUBSのみで、欧州の他の銀行が発行するAT1債にはこうした条項は含まれていない。しかし、20日の欧州市場では損失を警戒してクレディ・スイスと同様の債権を発行する金融機関の株式を売る動きが広がり、市場を落ち着かせるためEUと英国の金融監督当局が相次いで声明を発表した。

欧州銀行監督機構(EBA)、欧州中央銀行(ECB)銀行監督委員会、ユーロ圏の銀行破綻処理を担う単一破綻処理委員会(SRB)は20日、共同で声明を発表し、経営危機時の対応について「まず株式で損失を吸収し、その後に劣後債の評価減を求める」と表明。イングランド銀行(英中銀)も声明で、英国の銀行破綻処理手続きには損失負担に関して「明確な列序」があると強調。AT1債の元本減額は普通株の損失引き受けより後になると説明した。

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