英政府は5日、離脱したEUから輸入する物品に対する完全な税関検査に関する原案を発表した。当初の予定から3年半遅れの2024年10月末から実施する。混乱を避けるため、段階的に新システムに移行し、税関検査を簡素化する措置も盛り込んだ。
英政府はEUからの輸入品について、離脱の移行期間が終了する21年1月1日から他の国の物品と同様の税関検査を実施する予定だった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大で苦境にある国内企業が通関手続きを迫られることで、さらに厳しい状況にさらされることや、コロナ禍の影響によるサプライチェーンの混乱などを理由に、4度にわたって延期を決定した。22年4月には2023年末まで延期する方針を打ち出していた。
完全な税関検査の原案によると、3段階に分けて実施する。第1弾として23年10月31日から、衛生上のリスク、動植物がかかる感染症の侵入のリスクが中程度の畜産物、農産品や高リスクの非動物性食品、飼料の輸入で、検査証明書の取得を求める。
24年1月31日からは、これらの品目について、税関検査を実施。最終段階として、24年10月31日から、EUからの輸入品に「安全性・セキュリティ申告」を義務付ける。
一方、通関手続きの負担を軽減する措置も導入する。その柱が「単一トレード・ウインドウ」と呼ばれる制度。輸出入業者が情報を1カ所で1度提出するだけで済むようにする。24年10月31日から段階的に運用を開始、27年までに本格的に運用する予定だ。
また、多くの品目で税関検査を免除する。港湾の混雑を避けるため、検査を港湾以外の場所ですることも決めた。さらに、定期的に輸入している信頼できる業者に関しては、通関手続きを一層簡素化する。
新たなルールはEU域外の国にも24年1月31日から適用される。EU単一市場に事実上残留している英領北アイルランドのEU製品輸入に関しては、同ルールは適用されず、通関手続きは免除される。
政府は原案に関する業界関係者の意見を聞いた上で、年内に最終案を決定することになっている。10億ポンドを投じて新制度に対応できる体制を整える。