仏政府が年金改革法を公布、憲法院の合憲判断受け

フランスのマクロン大統領は14日、年金改革法に署名し、同法は15日に公布された。受給開始年齢を現行の62歳から段階的に引き上げ、2030年に64歳とする内容で、予定通り9月から施行される見通しだ。ただ、国民の反発は根強く、今後も抗議活動が続くものとみられる。

年金改革法案は財政再建に向けた政策の柱として1月に提出された。同法案は上院を通過したが、与党連合が過半数割れしている下院では可決が見込めないため、マクロン政権は3月、採決なしで首相が採択できる憲法の規定を適用し、強行採択に持ち込んだ。これに抗議する野党側は内閣不信任決議案を提出するとともに、憲法院に法案が違憲かどうかの審査を要請。不信任決議案は下院で否決され、憲法院も14日、受給開始年齢の引き上げを含む法案の主要部分を合憲とする審査結果を発表した。これを受けて政府は年金改革法を官報で公布した。

ボルヌ首相はツイッターに「すべての民主的手続きが完了した。勝者も敗者もない」と投稿。予定通り9月から年金改革法を施行する方針を示した。仏メディアによると、マクロン氏は主要労組に対し、18日に年金改革に関する話し合いを提案したが、労組側はこれを拒否。メーデーの5月1日に大規模デモの実施を呼びかけている。

マクロン政権は1期目の19年にも年金改革を打ち出したものの、燃料増税への反発から全国に広がった反政府デモ「黄色いベスト運動」の高まりで大規模なストライキに直面。20年には新型コロナウイルス感染拡大を理由に、改革をいったん断念した経緯がある。

世論調査では国民の約6割が年金改革に反対しており、1月以来、各地でデモやストライキが続いている。憲法院が合憲の判断を示した14日にもパリなどで大規模なデモが発生。労組などは引き続き改革に反対するよう呼びかけており、抗議行動は今後も続きそうだ。

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