スイス連邦議会の下院は12日、経営危機に陥った金融大手クレディ・スイスの同業UBSによる買収に際して政府が決めた総額1,090億スイスフラン(約16兆2,000億円)の支援策を反対多数で否決した。ただ、支援策は緊急法令に基づくもので、議会に覆す権限はなく、否決は象徴的な意味合いにとどまる。
UBSは3月19日、クレディ・スイスを買収することで合意した。クレディ・スイスの破綻がスイス発の金融危機につながりかねないとの懸念が強まる中、政府やスイス国立銀行(中央銀行)が強く後押しする形で買収が決まった。
問題となった支援策は、中銀が両行に最大1,000億スイスフランの流動性支援融資を行うほか、UBSがクレディ・スイスから引き継ぐ資産の価値が下がったり、買収に伴う訴訟などで将来に損失が生じた場合、90億スイスフランの政府保証を付与するというものだ。
同措置をめぐっては、下院が巨額の公的資金をクレディ・スイス救済に拠出することに難色を示し、11日に否決。支援を支持する上院は12日、妥協案として銀行法を改正し、大手銀行の資本要件厳格化、ボーナスを制限することを盛り込んだ修正案を可決したが、下院が受け入れず、再び否決した。
支援措置は緊急法令で定められているため、政府は議会が否決しても実施する方針だ。