欧州委が銀行破綻処理改革案発表、規模問わず「秩序ある市場退出」可能に

欧州委員会は18日、銀行の危機管理と預金保険制度を改革するための法案を発表した。銀行が破綻した場合の破綻処理制度を見直し、域内のすべての銀行に同制度が適用されるようにすることで、公的資金を投入して納税者に負担を強いる事態を回避するのが狙い。今後、欧州議会と閣僚理事会で法案について討議する。

EUの銀行破綻処理制度は、破綻処理時に当該銀行の株主などに損失負担を求める「ベイルイン」が前提となっている。2007~09年の金融危機に伴う銀行の破綻処理に際し、公的資金の注入(ベイルアウト)を実施して納税者に負担を強いたことに対する批判を受けて導入された基本原理だ。しかし、実際に適用されるのは金融システム全体に影響を及ぼす大手行に限定され、中小の銀行が破綻した場合は国内法に基づく倒産手続きに沿って清算されるケースが多い。こうした現状を踏まえ、「大きすぎてつぶせない」銀行をなくすために整備された制度を見直し、規模やビジネスモデルを問わず、破綻した銀行の「秩序ある市場退出」を可能にする。

改革案によると、域内の銀行が危機的状況に陥った場合、金融システムの安定を維持し、納税者の資金を保護するため、規模や負債構成などにかかわらず、すべての銀行が単一破綻処理基金(SRF)や預金保証制度などのセーフティネットを活用できるようにする。また、破綻処理の過程で預金者の口座を他行に移管するなどの措置を講じることを可能にし、顧客の混乱を最小限に抑えて地域経済に悪影響が及ばないようにする。

預金保険制度に関しては、EU共通のルールとして加盟国が預金者1人当たり10万ユーロまで保護し、銀行破綻から7日以内に支払うことが義務付けられている。保証水準は現状のまま維持されるが、欧州委は保護対象を病院、学校、自治体をはじめとする公共機関のほか、投資会社、決済機関、電子マネー運営会社などの顧客資金に拡大することを提案している。

欧州委のドムブロフスキス上級副委員長は声明で「金融危機以降に実施した規制改革を通じてEUの銀行システムはより強固になり、衝撃に耐えられる状態にある。われわれは破綻したすべての銀行がより効果的かつ首尾一貫して対処できるようにするため、新たな一歩を踏み出した。金融の安定を維持しながら納税者の資金を保護し、預金者の信頼を向上させるという原則に変わりはない。今回示した改革案は、銀行同盟を完成させることにもつながる」と述べ、改革の意義を強調した。

上部へスクロール