EUの財政ルール改正案、欧州委が詳細発表

欧州委員会は4月26日、EUの財政ルール改正案の詳細を発表した。加盟国が主体となって柔軟に財政健全化を進めることを可能としながらも、累積債務が上限を超えた加盟国に対して、毎年一定の水準で債務を削減することを求めるのが柱となっている。

EUの財政規律を定めた安定成長協定では、各国に単年の財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内、累積債務をGDP比60%以内に抑えることを義務付けている。順守できなかった国には厳しい制裁が課される。

欧州委は22年11月、厳しすぎるとされる財政規律を見直し、各加盟国の財政健全化を重視しながらも、柔軟な債務削減を可能とし、地球温暖化対策で必要となる環境投資などの障害にならないよう配慮する内容のルール改正案を発表。赤字をGDP比3%以内、累積債務を同60%以内に抑えることを求めるルールは継続するが、累積債務が上限を超えた国にGDP比0.5%に相当する債務を毎年削減することを義務付ける規定を撤廃し、各国が欧州委と協議した上で独自の債務削減計画を策定できるようにする方針を打ち出した。

同案では財政赤字を抱える国は財政健全化に取り組み、支出を毎年、適正な水準に設定することで、4年間をかけて赤字が安定的に縮小する軌道に乗るようにする。地球温暖化対策などEUが重視する分野への投資や、債務の持続的削減に向けた財政の構造改革で赤字が拡大した場合は、同期間を7年に延長する。

この改正案は加盟国が3月に開いた財務相理事会、EU首脳会議で大枠で承認された。ただ、累積債務が上限を超えた場合の毎年の削減について、共通の指針を設けるかどうかなどは持ち越しとなり、欧州委が詳細を詰めて具体案を発表することになっていた。

欧州委がまとめた案によると、累積債務がGDP比60%を超えた国の毎年の削減幅に関しては、「ベンチマーク」としてGDP比0.5%が最低水準となる。事実上、共通の指針が設けられた形となる。対象国は毎年の財政赤字がGDP比3%を割り込むまで、同水準の削減を求められる。

同案は加盟国、欧州議会の承認が必要。年内の決着を目指す。

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