欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2023/5/8

EU情報

ECBが追加利上げ決定、上げ幅は0.25%に縮小

この記事の要約

欧州中央銀行(ECB)は4日に開いた定例政策理事会で、政策金利を0.25ポイント引き上げることを決めた。利上げは7会合連続。記録的な物価高に対応し、これまでは0.5ポイント以上の利上げを実施してきたが、インフレ率上昇に歯 […]

欧州中央銀行(ECB)は4日に開いた定例政策理事会で、政策金利を0.25ポイント引き上げることを決めた。利上げは7会合連続。記録的な物価高に対応し、これまでは0.5ポイント以上の利上げを実施してきたが、インフレ率上昇に歯止めがかかっていることや、景気への目配りも重視し、小幅の引き上げにとどめた。

主要政策金利は3.5%から3.75%、民間金融機関が余った資金をECBに預け入れる際の金利(中銀預金金利)は3.0%から3.25%に引き上げられる。新金利は10日から適用される。

ユーロ圏のインフレ率は鈍化傾向にあるものの、なおECBが目標値とする2.0%を大きく上回っている。このため、小幅ながら追加利上げを決めた。コロナ禍前から実施してきた「資産購入プログラム(APP)」(7月1日に終了)で買い入れた国債などの資産の保有を減らす「量的引き締め」に関して、7月から減少のペースを月150億ユーロから250億ユーロに拡大することも決めた。

ECB はインフレ対策として22年7月から利上げを実施。上げ幅は通常を大きく上回る0.5または0.75ポイントだった。

利上げ幅を0.25ポイントに抑えた背景には、4月のインフレ率が6カ月ぶりに拡大したものの、ECBが金融政策決定で重視する基礎インフレ率(価格変動が激しいエネルギー、食品・アルコール・たばこを除いたインフレ率)が22年6月以来の縮小に転じた(後続記事参照)ことや、23年1~3月期のユーロ圏の実質成長率が前期比0.1%と低迷していることがある。

さらに、ECBが2日に公表した23年1~3期の銀行貸出調査(BLS)で、これまでの利上げの影響で企業、家計の融資需要が急速に減退し、銀行の与信条件も厳格化していることが判明し、信用収縮の恐れがあることも大きな要因となった。

ただ、ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、賃上げが進んでいることなどでインフレの「大きな上振れリスクがある」として、引き続き物価上昇を警戒していく意向を表明。「まだやらなければならないことがある。休止はしていない」と述べ、利上げ打ち止めを否定した。市場ではECBが米国の金融不安の影響などを考慮しながらも、6月以降に少なくとも1回の利上げを行うとの見方が大勢だ。