欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2023/6/5

EU情報

EU・米が「経済的威圧」に共同対応、AI分野でも連携強化

この記事の要約

EUと米国は5月30、31の両日、スウェーデンで貿易やハイテク分野での協力強化を目的とする閣僚級会合「米EU貿易・技術評議会(TTC)」を開き、中国を念頭に貿易や投資の制限などで他国に圧力をかける「経済的威圧」に共同で対 […]

EUと米国は5月30、31の両日、スウェーデンで貿易やハイテク分野での協力強化を目的とする閣僚級会合「米EU貿易・技術評議会(TTC)」を開き、中国を念頭に貿易や投資の制限などで他国に圧力をかける「経済的威圧」に共同で対抗する方針を確認した。また、人工知能(AI)のリスク管理や半導体サプライチェーンの強靭化などでも緊密に連携することで合意した。

TTCは2021年9月に第1回会合が開催され、今回が4回目。これまでに半導体、AI、国際貿易体制、輸出管理、投資審査、技術標準、気候・クリーン技術など10分野で作業部会を設置し、協議が進められている。

今回の会合にはEUから欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商政策担当)、ベステアー上級副委員長(競争政策担当)、ブルトン委員(域内市場担当)、米国からはブリンケン国務長官、レモンド商務長官、タイ米通商代表部(USTR)代表が出席した。

EU・米は共同声明で、経済安全保障を重視し、経済的威圧に対しては双方が「あらゆる政策を動員して対応する」と強調。また、先端技術が軍事転用されるのを防ぐため、重要分野において企業が懸念国に対外投資を行うことを制限する方向で検討することや、ロシアとベラルーシに対する輸出制限に関連する規制を調和させて管理リストの調整などを進める方針も盛り込んだ。

AI分野では革新的で信頼性が高く、人権など普遍的な価値を尊重したAIシステムの構築に向け、双方が協力を拡大することで一致。生成型AIについては「急速な機会拡大に伴い、リスクに対処する必要性が浮き彫りになっている」と指摘し、TTC共同ロードマップに沿ってリスク管理を強化する方針を示した。

ベステアー氏は会合後の会見で、EUと米国がAI業界に働きかけ、自主的な行動規範の策定を促すべきだとの考えを示した。EUはAIの利用に関する包括的な規制の早期導入を目指しているが、技術開発の急速な進展に法整備が間に合わないのが実情。ベステアー氏は「ベストシナリオでもAI規制法の発効まで2年半から3年はかかり、明らかに遅すぎる」と指摘。企業が自主的に順守するルールを策定してAIがもたらすリスクに対応すると同時に、AIビジネスに対する投資環境を整える必要があると述べた。

会合ではこのほか、強靭な半導体のサプライチェーンの構築に向け、供給体制に問題が生じた場合にEU米間で早期に情報を共有するシステムの構築や、補助金競争を防止するためのメカニズムを導入することで合意した。