欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/11/24

EUその他

英最高裁、政府にEU大気汚染規制順守命令へ

この記事の要約

英国がEUの大気汚染防止に関する指令のうち、二酸化窒素(NO2)に関する規制に違反している問題で、欧州司法裁判所は19日、英国最高裁判所は政府に対しEUの大気汚染規制を順守するよう命じる権限があるとの判断を示した。最高裁 […]

英国がEUの大気汚染防止に関する指令のうち、二酸化窒素(NO2)に関する規制に違反している問題で、欧州司法裁判所は19日、英国最高裁判所は政府に対しEUの大気汚染規制を順守するよう命じる権限があるとの判断を示した。最高裁はこれを受け、来年にもEUの規制を速やかに順守するよう政府に命じる判決を出す見通しだ。

EUは2008年に採択された「環境大気質に関する新指令」で、NO2や窒素酸化物(NOx)、二酸化硫黄(SO2)、粒子状物質(PM10)、一酸化炭素(CO)など、人体に悪影響をもたらす大気汚染物質の基準値を設定し、各国当局に順守を義務づけている。このうち車両などが主な排出源であるNO2に関しては、2010年1月が達成期限となっていたが、英国は43地域のうちロンドン、マンチェスター、バーミンガム、グラスゴーなど40地域で大気中のNO2濃度が制限値を超え、順守できなかった。

同指令では、NO2規制を期限内に遵守できなかった国が、有効かつ実行可能な改善計画をまとめた場合は、達成期限の5年延長を認める規定がある。英国政府は11年9月、基準値を達成できなかった40地域のうち24地域について、15年1月までの達成を目指す改善策を提出した。しかし、残り16地域については改善策を提出しておらず、基準値の達成が多くの地域で2020年、汚染が特に深刻なグレーター・ロンドンでは25年までずれ込む見通しとなっている。このため、弁護士などで構成する環境NGOのクライアントアースは、15年1月までに基準値を達成するよう英国政府に命じるよう裁判所に求める訴訟を起こした。しかし、高等裁判所と上訴院は、規制執行は欧州委員会の問題であるとして訴えを退けたため、最高裁に上告。最高裁はこの事案を欧州司法裁判所に付託していた。

欧州司法裁判所は判決で、EU加盟国が大気質指令の基準値を順守しておらず、達成期限の延長も申請していない場合、当該国の裁判所には国内当局に「可能な限り短期間で」基準を達成させるよう「必要な措置」をとる権限があると述べた。

クライアントアースのアンドリュース弁護士は、欧州司法裁判所の判決を受け、「これはEU法における画期的な判例であり、欧州全土で訴訟を起こすことが可能になる。クライアントアースは裁判所で清浄な大気を持つ権利を守ろうとする人々を支援する取り組みの先頭に立つ」と語った。

なお、英国の大気汚染防止規制違反をめぐっては欧州委員会が2月、NO2に関する規制を順守しておらず、改善の目途も立っていないとして、同国に対する法的手続きを発動している。