欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/12/8

EU産業・貿易

課税逃れ防止の法案策定、独仏伊が欧州委に要請

この記事の要約

EU内で低税率を武器に企業誘致を推進してきたルクセンブルクなどの課税措置に対する批判が高まる中、ドイツ、フランス、イタリアの財務相が1日までに欧州委員会に共同で書簡を送り、多国籍企業による課税逃れを防止するため新たな法案 […]

EU内で低税率を武器に企業誘致を推進してきたルクセンブルクなどの課税措置に対する批判が高まる中、ドイツ、フランス、イタリアの財務相が1日までに欧州委員会に共同で書簡を送り、多国籍企業による課税逃れを防止するため新たな法案の策定を急ぐよう要請したことが分かった。経済協力開発機構(OECD)とG20が昨年7月に共同で打ち出した「BEPS(税源浸食と利益移転)行動計画」に基づき、2015年末までに拘束力のあるEU共通ルールを整備するよう求めている。

欧州委は企業誘致を目的としたルクセンブルク、アイルランド、オランダの課税措置が違法な国家補助にあたる可能性があるとして、6月から本格調査を進めている。ルクセンブルクの優遇税制をめぐっては、調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が先月、同国当局が02~10年にかけて世界の大手企業340社以上との間で秘密の取り決めを結び、極めて低い税率を適用していたとの調査結果を公表。この間に同国の首相兼財務相を務めていた欧州委のユンケル委員長が企業の課税逃れに加担したとの批判が高まっている。

ショイブレ独財務相、サパン仏財務相、パドアン伊経済・財務相は欧州委のモスコビシ委員(経済金融問題・税制・関税担当)に宛てた書簡で、「EU市民と域内の企業は、多国籍企業による租税回避や攻撃的なタックスプランニング(節税計画)に対して厳しく対処することを求めている。年内にEUとして強力なイニシアチブを打ち出すことで、国際的な議論の場で主導権を握ることができる」と指摘。

具体的には◇加盟国間で課税に関する自動的な情報交換を徹底する◇登記ルールを厳格化してペーパーカンパニーなどを通じた不透明な資金移動に対する監視を強化する◇税率の低い国に利益を移す節税策を規制するため、企業グループ内における知的財産や原材料などの取引価格や金融取引に関する情報の開示を義務付ける――などを提言。「EUはタックスヘイブン(租税回避地)を利用した課税逃れから域内市場を守る必要がある。早急にBEPSに対抗するためのEU共通ルールを整備することが、不透明な租税回避行為を取り締まる有効策になる」と強調している。