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2014/12/15

総合 – 欧州経済ニュース

ギリシャへの金融支援を2カ月延長、ユーロ圏が財務相会合で決定

この記事の要約

ユーロ圏は8日に開いた財務相会合で、今年末が期限となっているギリシャへの金融支援を2カ月延長することを決めた。最後の支援実施の条件をめぐる調整が難航しているためで、ギリシャ政府の要請を受け入れる形で期限を延ばし、協議を続 […]

ユーロ圏は8日に開いた財務相会合で、今年末が期限となっているギリシャへの金融支援を2カ月延長することを決めた。最後の支援実施の条件をめぐる調整が難航しているためで、ギリシャ政府の要請を受け入れる形で期限を延ばし、協議を続ける。

信用不安で深刻な債務危機に陥ったギリシャは、ユーロ圏と国際通貨基金(IMF)から2010年に1,100億ユーロ、12年に1,300億ユーロの緊急金融支援を取り付けた。このうちユーロ圏の支援は年末で終了し、金融支援終了後に自力での資金調達が難しくなる場合に備えた予防的融資枠を設定することになっていた。

ギリシャは同金融支援によって窮地を脱し、債務危機は沈静化した。ただ、この支援にはユーロ圏とIMFに約束した厳しい財政緊縮策を実行するという条件が付くため国民には不人気で、政府は早く支援を脱却し、より条件が緩やかな予防的融資枠への切り替えを目指している。

ギリシャが望むユーロ圏の支援終了には、財政改善が約束通り進んでいると認定され、最後の18億ユーロの支援を受け取ることが必要となる。これをめぐっては、ユーロ圏はギリシャの2015年予算案では赤字削減が不十分として、増税やさらなる緊縮策によって17億ユーロを削減するよう求めているが、ギリシャ政府が抵抗している。年内の合意は難しく、予定通り支援が終了するのは難しいことから、ユーロ圏はギリシャの要請に応じて支援期限の2カ月延長を決めた。

一方、ギリシャのサマラス首相は同日、大統領選挙を12月17日に前倒しで実施する意向を表明した。赤字削減をめぐる協議の期限延長を取り付けたことを追い風に、大統領選での劣勢を覆す狙いがあるとみられる。

ギリシャの大統領は議会(定数300)の投票で選ばれる。当選には200票の獲得が必要。1回目の投票で200票に達した候補がいなければ再投票を行い、それでも決まらなければ3回目の投票で180票を得た候補者が当選となる。3回目でも決まらない場合は解散・総選挙が行われる。パプリアス大統領の任期満了に伴う選挙は2月中旬に実施されることになっていた。

サマラス首相率いる新民主主義党(ND)と全ギリシャ社会主義運動党(PASOK)の連立与党の議席は155で、新大統領選出に必要な180に満たない。このタイミングでの選挙前倒しには、来年2月に金融支援から脱却し、財政緊縮策の束縛が緩むことから、大統領選で無所属系議員などの支持を取り付けることができると見込んでいることが背景にあるもよう。ただ、目算が外れた場合は解散総選挙に追い込まれ、財政再建に向けた緊縮策に反対する急進左派連合(SYRIZA)が国民の支持を集めていることから、首相は大きな賭けに出た形となる。