欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/1/12

総合 – 欧州経済ニュース

「対ロ制裁解除、ミンスク合意完全履行が条件」=独首相

この記事の要約

ドイツのメルケル首相は8日、ウクライナ情勢をめぐってEUがロシアに科している制裁を解除するためには、昨年9月にウクライナ政府と親ロシア派の間で交わされた停戦合意(ミンスク合意)が完全に履行されることが条件となるとの認識を […]

ドイツのメルケル首相は8日、ウクライナ情勢をめぐってEUがロシアに科している制裁を解除するためには、昨年9月にウクライナ政府と親ロシア派の間で交わされた停戦合意(ミンスク合意)が完全に履行されることが条件となるとの認識を示した。

メルケル首相はウクライナのヤツェニュク首相との首脳会談後にベルリンで記者会見し、「制裁解除について話ができるようになるためには、ミンスク合意が全て実行されなければならない」として、停戦合意に含まれる12項目すべてを完全に履行することを求め、合意の進捗状況を見て段階的に制裁を緩和する考えはないことを明らかにした。ミンスク停戦合意は重火器の引き離しやロシア・ウクライナ国境の監視、外国部隊の撤退など12項目から成る。メルケル首相は一方、ロシアによるウクライナ南部クリミア半島編入を受けて科した制裁に関しては、クリミアがウクライナに戻ることが解除の条件になるとの認識を示したうえで、「現時点で(解除の)望みは薄い」と述べた。

ドイツでは対ロシア制裁をめぐってメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)と連立を組む社会民主党(SPD)との間でスタンスの違いが明らかになっている。SPD党首であるガブリエル副首相は4日、日曜紙『ビルト・アム・ゾンターク』に掲載されたインタビューで、これ以上ロシアに経済制裁を科して追い詰めれば欧州に危険が及ぶと警告。「ロシアを政治的・経済的に窮地に追い込むことが目的ではない」と述べた。また、連邦政府東方調整官を務めるエルラー議員も7日、ロイター通信の取材に対し、ミンスク合意の履行に進展があった場合には、制裁緩和を考慮すべきだとの考えを示した。

メルケル首相の発言は、こうした対ロシア穏健派とは一線を画し、引き続き同国に対して厳しい姿勢で臨む姿勢を鮮明にしたものと言える。同首相はまた、ウクライナ危機の打開に向け関係4カ国が今月中旬にカザフスタンの首都アスタナで計画されている首脳会談について、今後数日間に停戦合意に関して進展があった場合にのみ開催されると述べた。ウクライナのポロシェンコ大統領は昨年12月29日、ロシアのプーチン大統領と1月15日にアスタナで会談すると表明。会談には仲介役としてメルケル首相、オランド仏大統領が同席するとされている。