欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/3/2

総合 – 欧州経済ニュース

ギリシャの財政改革案をユーロ圏が承認、支援4カ月延長へ

この記事の要約

ギリシャ政府は1月23日、EUによる金融支援延長の条件となる財政改革案のリストをEUに提出し、24日に行われたユーロ圏の財務相の電話協議で承認された。これによってギリシャは2月末が期限だった金融支援の4カ月延長が決まり、 […]

ギリシャ政府は1月23日、EUによる金融支援延長の条件となる財政改革案のリストをEUに提出し、24日に行われたユーロ圏の財務相の電話協議で承認された。これによってギリシャは2月末が期限だった金融支援の4カ月延長が決まり、財政破綻の危機をとりあえず回避した。

債務危機に陥ったギリシャは2010年から12年にかけて、EUと国際通貨基金(IMF)から総額2,400億ユーロの緊急金融支援を取り付けた。1,300億ユーロに上る第2次支援のうち、EUの支援は2月末が期限となっていた。

同支援の条件となっていた緊縮策の放棄を掲げて1月に発足した新政権は当初、金融支援の既存の枠組みを大幅に見直し、緊縮策継続を伴わない形での支援続行を求めた。しかし、EUの同意を得ることができないまま支援の期限が迫ってきたことから妥協を余儀なくされ、20日に開かれたユーロ圏財務相会合で、同枠組みを基本的に踏襲することを条件に、支援を4カ月延長することで合意した。ただし、財政改革案のリストを提出し、承認を受けることが必要となっていた。

同リストにはEUの意向に沿って脱税、汚職、たばこなどの密輸への対策を強化し、税収増を図ることや、歳出抑制などが盛り込まれた。焦点となっていた最低賃金引き上げに関しては、総選挙で公約に掲げていた即時実施を取り下げ、EU側と協議しながら段階的に実施する。また、公約で増税は避けるとしていたが、エーゲ海諸島に対する付加価値税(VAT)の軽減措置を廃止し、標準税率を適用することも打ち出した。

一方、EU側に完全に屈し、選挙公約を反故にすると国民の反発を招き、政権が揺らぎかねないことから、貧困層向けの電力料金無料化、医療費免除といった反緊縮的な措置も含まれた。歳入増加策としてEUに約束していた国営企業民営化についても、すでに入札を実施したものに関しては実施するものの、入札前の案件は見直す方針を打ち出した。

ユーロ圏の財務相は電話協議の結果、同改革案には緊縮路線から逆行する要素が含まれているものの、「十分に包括的」で、今後の交渉の「出発点」としては妥当と判断し、承認した。これを受けて、27日までにドイツなどが支援を4カ月延長するための議会手続きを完了。ユーロ圏がギリシャなど重債務国を支援するため創設した「欧州金融安定基金(EFSF)」も27日、支援延長を決定した。

承認されたリストは今後の協議のたたき台となるもので、4月末までに詳細を詰め、EUなどから正式な同意を取り付ける必要がある。それまでは現行支援で最後となる72億ユーロの融資は実行されないため、ギリシャは窮地を脱したとはいえない。同リストをめぐっては、IMFのラガルド専務理事と欧州中央銀行のドラギ総裁が、具体性に欠け、既存の枠組みに基づく財政再建計画とも異なると厳しい評価を下しており、財政改革の最終合意に向けた交渉は曲折が予想される。

一方、ギリシャではチプラス首相率いる新政権がEUと妥協し、選挙で公約した緊縮策見直しを事実上断念したことへの批判が強まっており、政府は国内でも逆風にさらされている。26日に首都アテネで数百人規模の反政府デモが発生。27日にはデモ参加者が7,000~8,000人程度まで膨らんだ。