欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/3/16

総合 – 欧州経済ニュース

アイスランドがEU加盟を放棄、加盟申請撤回を正式通知

この記事の要約

アイスランド政府は12日、EU加盟申請を撤回することを決め、EUに通知したと発表した。同国は2009年に加盟を申請し、加盟交渉を進めたが、EU入りの大きな動機となった金融危機が終息し、加盟に批判的な空気が強まったことから […]

アイスランド政府は12日、EU加盟申請を撤回することを決め、EUに通知したと発表した。同国は2009年に加盟を申請し、加盟交渉を進めたが、EU入りの大きな動機となった金融危機が終息し、加盟に批判的な空気が強まったことから交渉は凍結状態にあった。今回の決定で、EU加盟を正式に放棄したことになる。

アイスランドはEU加盟に必要な環境がほぼ整っているにも関わらず、経済の柱である漁業の統制権を失うため、あえてEU加盟を避けてきた。しかし、08年の金融危機で国内経済が大混乱したことから、EUおよびユーロ圏の一員となって、国際支援を受けながら経済再建を進めるのが得策と判断し、09年に加盟を申請。10年に加盟交渉を開始し、これまでに35に上る交渉分野のうち11分野の交渉が完了した。

状況が変わった背景には、金融危機の沈静化に伴い、EUの支援を受けずに経済再建を進めるめどが立ったほか、大西洋北東海域のサバ漁の漁獲枠をめぐるEUとアイスランドの対立が深まったことがある。これを受けて政府は12年1月、加盟交渉の凍結を発表。EU入りに批判的な中道右派の新政権が13年に発足したことで、加盟撤回が決定的な情勢となっていた。

政府は昨年2月、加盟交渉を正式に打ち切り、加盟申請を撤回する方針を打ち出したが、国民投票にかけずに加盟を放棄することが批判されたため、様子を見守ってきた。しかし、世論調査でEU加盟に批判的な国民が増えていることから、申請撤回を最終決定。外務省は12日発表した声明で、EU議長国ラトビアと欧州委員会に同決定を通知したことを明らかにした。

アイスランドは欧州経済地域(EEA)に参加していることから、EUに加盟していなくても最大の外貨収入源である水産品を非関税で域内諸国に輸出できるなど、経済的な結びつきが深い。こうしたこともあって、政府はEU加盟を見送るのが得策と判断したとみられる。