欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/5/26

EU産業・貿易

紛争鉱物の規制案が可決、輸入業者に認証義務付け

この記事の要約

欧州議会は20日の本会議で、武装勢力の資金源となる「紛争鉱物」の不使用を進めるための規制案を可決した。鉱物の輸入業者に認証取得を義務付けることなどが柱。輸入業者に任意の取り組みを求めた欧州委員会の原案と比べ厳しい内容で、 […]

欧州議会は20日の本会議で、武装勢力の資金源となる「紛争鉱物」の不使用を進めるための規制案を可決した。鉱物の輸入業者に認証取得を義務付けることなどが柱。輸入業者に任意の取り組みを求めた欧州委員会の原案と比べ厳しい内容で、産業界などから反発が予想される。

紛争鉱物とは、中部アフリカのコンゴ民主共和国およびその周辺国で産出される金、タンタル、スズ、タングステンの4鉱物を指す。コンゴでは1990年代、鉱物資源が集中する地域を主な舞台に内戦が激化。市民の貧困が深刻化して治安が悪化し、鉱山では児童や女性の強制労働が行われるなど人権侵害が常態化した。国連は4種の鉱石を中心にした鉱業とその流通の収益が武装勢力の資金源であるとして制裁措置を採択。米国では上場企業に対し紛争鉱物の使用状況などの開示を義務づける法律の運用が2013年から始まっている。

欧州委は昨年3月、上記の4鉱物を輸入する業者が、経済協力開発機構(OECD)の「紛争鉱物デューディリジェンスガイダンス」に従って鉱物の調達先と流通経路の調査を実施し、輸入した鉱物が紛争地帯に由来するものではないことを任意で自己認証する制度を創設することを提案した。これに対し、欧州議会では企業による自主的な取り組みでは不十分だとの声が左派や緑の党、リベラル系の議員を中心にあがり、今回可決された修正案では、すべての輸入業者に認証を義務付けるとともに、これらの鉱物を製品に加工する川下業者に対しても情報提供・開示義務を課すとしている。欧州議会によると、修正案では域内の約88万社が規制の対象となる。

欧州議会は今後、理事会の間で規制案の内容について最終合意を目指し協議を行う。ただ、企業に負担を課す内容には加盟国政府から強い抵抗が予想され、協議は難航しそうだ。