欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/5/12

総合 – 欧州経済ニュース

ユーロ圏の14年成長率は1.2%、欧州委が最新予想で据え置き

この記事の要約

欧州委員会は5日発表した春季経済予測で、ユーロ圏の景気は徐々に回復しているとして、2014年の域内総生産(GDP)予想伸び率を前回(2月)と同じ1.2%に据え置き、雇用見通しも引き上げた。ただ、消費者物価については、上昇 […]

欧州委員会は5日発表した春季経済予測で、ユーロ圏の景気は徐々に回復しているとして、2014年の域内総生産(GDP)予想伸び率を前回(2月)と同じ1.2%に据え置き、雇用見通しも引き上げた。ただ、消費者物価については、上昇率が低水準にとどまる状況が長期化すると予想し、インフレ率を下方修正した。(表参照)

ユーロ圏の13年のGDPは0.4%減で、2年連続でマイナス成長となったが、4~6月期に景気後退から脱却し、その後は緩やかに回復している。欧州委は15年の予想成長率を1.7%とし、前回から0.1ポイント下方修正したが、カラス副委員長は債務危機に陥った国の財政改善や圏内の設備投資の復調が進んでいることなどに触れ、「(景気の)回復が根を下ろした」との認識を示した。ただ、欧州委は報告書で、新興国経済の減速、ユーロ高、ウクライナ危機といった不安材料もあるとして、持続的な回復には各国が構造改革を推進することが必要になるとも指摘した。

EU28カ国ベースの予想成長率は、14年が前回を0.1ポイント上回る1.6%。15年は2%に据え置いた。主要国の14年の予想成長率は、ドイツが前回と同じ1.8%。英国は2.7%、スペインは1.1%で、それぞれ0.2ポイント、0.1ポイント上方修正した。一方、フランスは1%、イタリアは0.6%で、前回から据え置き。ともにユーロ圏平均を下回る水準に設定された。フランスは回復の遅れが不安視されており、15年は1.5%と、0.2ポイント下方修正された。

ユーロ圏の債務危機の震源地となったギリシャは、13年の3.9%のマイナス成長から0.6%のプラス成長に転じる見込み。ユーロ圏では14年にキプロスが唯一のマイナス成長国となるが、欧州委は15年には同国も0.9%のプラス成長に復帰すると予想している。

13年に過去最悪の12%まで悪化したユーロ圏の失業率は、景気回復に伴って改善する見通し。14年は11.8%、15年は11.4%と予想し、それぞれ前回の12%、11.7%から引き下げた。財政赤字は14年がGDP比2.5%、15年が2.3%。13年の3%から改善し、財政規律の上限(GDP比3%)範囲内に収まると予想した。ただ、フランスは14年が3.9%、15年が3.4%となり、約束している15年までの規律違反解消を達成できない見通しだ。

一方、ユーロ圏のインフレ率は、14年が0.8%、15年が1.2%と、13年の1.3%を下回り、欧州中央銀行(ECB)の上限目標値である2%を大きく割り込むと予想した。ユーロ高の影響などを織り込み、それぞれ0.2ポイント、0.1ポイントの幅で下方修正した。欧州委はデフレに陥る可能性は「非常に低い」としているものの、低インフレが成長を押し上げる上での最大のリスクとなっていることが改めて浮かび上がった。