欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/7/6

EU情報

中規模燃焼施設の排出規制、段階的実施で合意

この記事の要約

EUは6月30日、加盟国のEU大使で構成する常駐代表委員会(COREPER)を開き、中規模燃焼施設から排出される大気汚染物質を規制する指令案の内容で合意した。石油精製所などの大規模燃焼施設についてはすでに汚染物質の排出規 […]

EUは6月30日、加盟国のEU大使で構成する常駐代表委員会(COREPER)を開き、中規模燃焼施設から排出される大気汚染物質を規制する指令案の内容で合意した。石油精製所などの大規模燃焼施設についてはすでに汚染物質の排出規制が実施されているが、新たに熱出力1~50MW(メガワット)の中規模施設を対象とする規制を導入し、施設ごとに排出上限値を設定して削減を義務付ける。今後、欧州議会と閣僚理事会で指令案について審議する。

EUでは人体に悪影響をもたらす大気汚染物質の制限値を設定し、加盟国にモニタリングと削減計画の策定・実施を義務付けた「大気質枠組み指令」をはじめとするさまざまな規制が導入されている。しかし、多くの国で達成期限を過ぎても汚染物質の濃度が規制値を超えているのが実情で、域内で年間およそ40万人が大気汚染による健康被害が原因で早期に死亡しているとされる。欧州委はこうした現状を改善するため、2013年12月にEU全体で大気汚染を防止するための規制強化策「クリーンエア・プログラム」を打ち出し、その中に中規模燃焼施設を対象とする汚染物質排出制限指令が含まれていた。

欧州議会、EU議長国ラトビア、欧州委は6月23日の3者協議で指令案について基本合意しており、今回、加盟国として正式に承認した。指令案によると、排出規制の対象物質は二酸化硫黄、窒素酸化物、微小粒子状物質の3種類。規制は施設の規模によって2段階で実施され、熱出力5~50MWのプラントは2025年、1~5MWのプラントは2030年から排出上限値の順守が義務付けられる。これは地域暖房システムやバイオマスを燃料とする発電設備といった規模の小さい燃焼施設のコスト負担を軽減しながら、高いレベルで環境保護を実現するための措置で、一律導入となっていた欧州委の原案に修正が加えられた。なお、新規施設は規模に関係なく、新指令の施行から2年以内に基準値を達成する必要がある。

一方、加盟国は対象施設から排出される一酸化炭素をモニターし、提出されたデータをもとに欧州委が規制の対象に加えるかどうか判断する。また、大気汚染物質の濃度がEUの定める規制値を超えている地域にある燃焼施設に関しては、より厳しい上限値を設定する方向で検討を進める。さらに、欧州委は利用可能な最高水準の技術や手法(best available techniques=BAT)を導入した場合に達成可能なエネルギー効率の最低基準を設定するメリットについても検証する。