欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/7/13

EU情報

19年に市場安定化準備制度(MSR)導入へ、欧州議会がEU-ETS改革案を可決

この記事の要約

欧州議会は8日の本会議で、EU排出量取引制度(EU-ETS)の改革案を賛成多数で可決した。2019年1月から排出権価格を下支えするための「市場安定化準備制度(MSR)」を導入し、低炭素技術への投資を促進する。加盟国はすで […]

欧州議会は8日の本会議で、EU排出量取引制度(EU-ETS)の改革案を賛成多数で可決した。2019年1月から排出権価格を下支えするための「市場安定化準備制度(MSR)」を導入し、低炭素技術への投資を促進する。加盟国はすでに改革案の内容で合意しており、9月に開かれる閣僚理事会で正式に承認される見通しだ。

EU-ETSでは排出枠の無償割当を段階的に減らし、27年までにオークションによる有償割当に全面移行することが決まっているが、ユーロ危機に伴う景気低迷で企業の生産活動が停滞した結果、排出枠が大量に余って供給過剰となり、排出権価格の低迷が続いている。MRSは排出枠の需給バランスを改善するための具体策として欧州委員会が昨年1月に打ち出した構想で、余剰排出枠を一旦リザーブしておき、需給がひっ迫した場面で取り崩して排出権価格を安定させる仕組み。

本会議では賛成495、反対158(棄権49)の大差で改革案が可決された。これによると、14-16年に有償配分する排出枠のうち、「バックローディング(排出枠の入札延期措置)」によって19年以降に入札が延期される9億トン分がMSRに組み込まれる。さらに、供給過剰のため第3フェーズ(13-20年)終了時までに対象施設への割当てが見送られた無償排出枠に関しても、MSRのリザーブに回すことが改革案に盛り込まれている。

MSRをめぐっては、欧州委が当初21年の導入を提案していたのに対し、低炭素社会への転換を推進する立場から17年への前倒しを主張する英国、フランス、ドイツなどと、導入時期を21年以降とするよう求めるポーランドなど東欧諸国の間で意見対立が続いていた。しかし、4月にチェコが早期導入を容認したことで一気に議論が進展し、最終的に19年1月1日付で同制度の運用を開始することで合意が成立した。