欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/7/20

EU情報

ギリシャ議会が財政改革法案を可決、EUはつなぎ融資など決定

この記事の要約

ギリシャ議会は16日未明、EUによる新たな金融支援の条件として求められている財政改革の関連法案を賛成多数で可決した。これを受けてEUは、最大860億ユーロに上る第3次支援の実施に向けた交渉開始を決定。つなぎ融資を行うこと […]

ギリシャ議会は16日未明、EUによる新たな金融支援の条件として求められている財政改革の関連法案を賛成多数で可決した。これを受けてEUは、最大860億ユーロに上る第3次支援の実施に向けた交渉開始を決定。つなぎ融資を行うことも決め、ギリシャ救済の動きが本格化してきた。

可決した財政改革は、EUが第3次支援を実施するための条件として、ギリシャに求めているもの。年金改革、付加価値税(VAT)の増税などが含まれる。EUとギリシャは13日のユーロ圏首脳会議で、ギリシャが15日までに議会で法制化することを前提に、支援実施の協議を開始することで合意していた。

これらの改革は、チプラス首相率いる左派・急進左派連合(SYRIZA)が1月の総選挙で掲げた緊縮策放棄に逆行するもので、5日の国民投票で緊縮にノーを突きつけた民意にも反することから、議会の採決では与党から32人の議員が反対し、6人が棄権した。それでも主要野党が支持に回り、賛成229票、反対64票で可決した。ギリシャ政府は改革のうち、VAT増税の一部を20日から実施する。

これに応じてEUは16日のユーロ圏財務相会合で、ユーロ圏の金融安全網である「欧州安定メカニズム(ESM)」を活用した3年間で最大860億ユーロの金融支援実施の交渉開始と、つなぎ融資実施で原則合意。ドイツ、フィンランドなどの議会が新支援を承認したことから、17日に正式決定した。また、欧州中央銀行(ECB)は16日、「緊急流動性支援(ELA)」に基づくギリシャの銀行に対する資金繰り支援を拡大し、9億ユーロ増額することを決めた。

つなぎ融資は新支援が実施されるまでギリシャの資金繰りを支えるのが目的。EU28カ国の金融安全網で、EU予算を担保とする債券発行で調達する資金を財源とする600億ユーロの「欧州金融安定メカニズム(EFSM)」を活用し、71億6,000万ユーロを緊急融資する。これによってギリシャは、20日が期限となっているECBに対する42億ユーロの債務を返済できることになった。このつなぎ融資をめぐっては、非ユーロ圏の英国などが難色を示していたが、ギリシャの返済が焦げ付いた場合に非ユーロ圏諸国の損失をユーロ圏がカバーするという妥協案がまとまり、合意にこぎ着けた。

ギリシャ政府は金融支援実施の目途が立ち、銀行の資金繰り悪化が緩和することから、6月29日から実施していた銀行の閉鎖を20日に解除することを決めた。資本規制は継続するが、預金引き出し制限は1日当たり60ユーロから週420ユーロに緩和する。

一方、チプラス首相は17日、内閣改造を発表した。財政改革法案の採決で造反したラファザニス・エネルギー相らを更迭する。