欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/7/13

EU情報

英原発新設への公的支援は不当、オーストリアが提訴

この記事の要約

オーストリア政府は6日、英国の原子力発電所新設事業に対する同国政府の公的支援をEUが承認したのは不当として、欧州司法裁判所に提訴したと発表した。反原発派のオーストリアは、原発新設はEU全体の利益とならず、これに対する補助 […]

オーストリア政府は6日、英国の原子力発電所新設事業に対する同国政府の公的支援をEUが承認したのは不当として、欧州司法裁判所に提訴したと発表した。反原発派のオーストリアは、原発新設はEU全体の利益とならず、これに対する補助はEUの公的支援に関するルールに違反すると主張している。

問題となっているのは、イングランド南西部のヒンクリー・ポイントに設置される原発。仏電力最大手のフランス電力公社(EDF)が仏原子力会社アレバ、中国の広核集団(CGN)、中国核工業集団(CNNC)と共同で総額160億ポンド(約226億ユーロ)を投じて建設するものだ。出力は1,650メガワットで、英国の電力需要の約7%を賄う能力を持つ。2023年の稼働を予定している。

既存の原発を含む多くの発電所で耐用期限が迫っており、新たな電力供給源の確保が急務となっている英政府は、同計画を支援するため、同原発に35年間にわたって電力固定価格買い取り制度(FIT)を適用し、取り決めた価格が電力卸売市場の価格を下回った場合に政府が差額を補填するほか、建設に必要な融資に政府が信用を供与する。固定買い取り価格は1メガワット時当たり92.5ポンドで、現在の英国の電力卸売価格の2倍に相当する。

同原発への公的支援をめぐっては、オーストリア政府や同国とドイツの再生可能エネルギー発電会社が反発していたが、EUの欧州委員会は昨年10月に承認していた。オーストリア政府は原発新設がEUの再生可能エネルギー発電を推進する政策に反すると指摘。「補助金はEU全加盟国にとって有益な新しい近代的な技術を支援するためのもので、原発は該当しない」として、欧州委の決定の取り消しを求めて提訴した。

オーストリアは1970年代から国内の原発稼働を禁止しており、電力需要の4分の3以上を再生可能エネルギー発電で賄っている。