欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/8/3

EU情報

仏ディズニーランドの料金設定めぐり本格調査、国による差別的扱いを問題視

この記事の要約

欧州委員会は7月28日、フランスのテーマパーク「ディズニーランド・パリ」が来場者の居住地によって異なる料金設定を行い、特定の国からの来場者に不当に高いチケットを販売している疑いがあるとして、調査を開始したことを明らかにし […]

欧州委員会は7月28日、フランスのテーマパーク「ディズニーランド・パリ」が来場者の居住地によって異なる料金設定を行い、特定の国からの来場者に不当に高いチケットを販売している疑いがあるとして、調査を開始したことを明らかにした。欧州委や域内の消費者センターには多くの苦情が寄せられているという。EU法は国籍や居住地によって域内の消費者を差別的に扱うことを禁止しており、調査ではこの点が焦点になる。

英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、ディズニーランド・パリはフランス国内やベルギーからの来場者向けにさまざまな割引サービスを用意しているのに対し、英国やドイツ向けには価格を高く設定しており、たとえば自国では1,346ユーロで販売しているプレミアム・パッケージを英国では1,870ユーロ、ドイツでは2,447ユーロで販売している。また、1日券も英国ではフランスより15%ほど高い価格設定になっているという。

ディズニーランド側はこうした指摘に対し、チケットの価格は基本的に各国の休日に合わせて設定しているため、販促目的のキャンペーンなどを除いた一般的なリゾートパッケージを直接ディズニーランド・パリから購入する場合、為替要因を除けば域内のすべての国で同一料金になっているなどと反論している。しかし、欧州委の報道官は「デンマークのレゴランドやチボリ公園、ドイツのヨーロッパ・パークなど、域内にある他のテーマパークについて調査したが、こうした価格差の問題は起きていない」と指摘し、ディズニーランドにより明確な説明を求めている。

欧州委が国や居住地による価格差を問題視する背景には、流通業者などが地理的制限(ジオ・ブロッキング)を設けて国外の消費者がサービスを利用できないようにしたり、居住する国のサイトに誘導して同じ商品を高い値段で販売するなど、国境をまたいだ取引を制限する動きを排除する狙いがある。欧州委は7月末、英有料テレビ大手スカイUKとウォルト・ディズニーを含む米大手映画会社が結んでいる放映権契約には国境を越えたサービス提供を制限する条項が盛り込まれており、反競争的協定を禁じたEU法に違反する可能性があるとして、計7社に異議告知書を送付している。