欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/9/28

EU情報

EU・米のデータ移転協定、司法裁法務官が「無効」見解

この記事の要約

EU司法裁判所の法務官は23日、個人データの移転に関するEU・米国間の取り決めである「セーフハーバー協定」について、同枠組みではEU市民の個人情報が十分に保護されず、協定は「無効」との見解を明らかにした。グーグルやフェイ […]

EU司法裁判所の法務官は23日、個人データの移転に関するEU・米国間の取り決めである「セーフハーバー協定」について、同枠組みではEU市民の個人情報が十分に保護されず、協定は「無効」との見解を明らかにした。グーグルやフェイスブックをはじめとする米企業は同協定に基づき、ユーザーの個人データを本国のサーバーに移転しているが、最終的に協定を無効とする判決が出た場合、欧米間で事業展開する多くの企業に影響が及ぶ可能性がある。

EUのデータ保護指令は十分なレベルの保護措置が確保されていない第3国へのデータ移転を禁じているが、米国にはEU指令に相当する包括的な個人情報保護ルールが存在しない。このため欧州委員会は1990年、米商務省との間で「セーフハーバー協定」を結び、商務省が十分な保護水準にあると認定した企業に対し、EU内から米国への個人データの移転を認めている。現在およそ4,500社が同枠組みで従業員の給与情報や連絡先など、幅広いデータを米国に移転しているが、米国家安全保障局(NSA)が大手IT企業を通じて大規模な情報収集活動を行っていることが暴露されたいわゆる「スノーデン事件」を受け、EU側の要請で2年前から協定の見直しが進められている。

今回の法務官見解は、オーストリアの法学生がフェイスブックを相手取り、同社が国際本部を置くアイルランドで起こした訴えに対するもの。フェイスブックは欧州のユーザーの個人情報を米国内のサーバーに移転し、NSAの情報収集活動を手助けしているとの主張に対し、アイルランドのデータ保護当局は「セーフハーバー協定で認められた行為」として訴えを退けたが、原告側が上訴したため、高等法院が同協定の合法性についてEU司法裁に判断を求めていた。

司法裁のイブ・ボット法務官は、スノーデン事件を受けて欧州委などが行った調査から、適切な法的保護が確保されない状態で、米国が大規模かつ無差別にEU市民の個人情報を収集していることは明らかだと指摘。EU加盟国のデータ保護当局はEU市民の個人情報が米国で適切に保護されていないことを察知した場合、データ移転を阻止することができるとし、「欧州委は米当局による盗聴や情報収集活動が暴露された時点でセーフハーバー協定の適用を一時停止すべきだった」と述べた。