欧州委が「アクセスビリティ指令案」発表、障害者の社会参加を支援

欧州委員会はこのほど、EU域内で暮らす障害者が社会・経済活動に参加できるよう、社会生活に必要なモノやサービスに健常者と同様にアクセスできることを目指す「欧州アクセスビリティ指令(案)」を発表した。交通、金融サービス、情報通信技術(ITC)などの重要分野を対象にEUレベルで標準化や規格化を進め、アクセシビリティを実現して障害者の社会参加を促すと同時に、とりわけ中小企業が国境を越えて障害者向けの市場に参入しやすい環境を整える。

EU域内では約8,000万人が何らかの障害を抱えて生活しており、高齢化の進行に伴い2020年までにこの数が1億2,000万人に拡大するとみられている。こうした障害者は就労を含めた社会活動への参加が難しく、EUの統計によると貧困率が平均より7割ほど高くなっている。EUは国連が06年に採択した「障害者の権利に関する条約」に基づいて、障害者の権利保護のための施策をまとめた「欧州障害者戦略2010-2020」を策定し、さまざまな分野で取り組みを進めている。モノやサービスへのアクセス確保は欧州障害者戦略が掲げる8つの優先課題のひとつで、欧州委は当初、13年夏にアクセシビリティ指令の原案をまとめる計画だった。

指令案によると、性能や機能、ユーザーインターフェース、デザインなどに関して「EU共通の要件」が求められる製品およびサービスは、コンピュータおよびオペレーティングシステム(OS)、ATM(現金自動預払機)、発券機、スマートフォン、デジタルテレビ関連機器、視聴覚メディアサービス(AVMS)および関連機器、航空・バス・鉄道・水上輸送サービス、預貯金業務、電子書籍、電子商取引など。標準化や規格化を通じて障害者向けの製品やサービスを手がける企業は国境を越えて事業展開しやすくなり、結果的に利用者は低価格で質の高い製品やサービスにアクセスすることが可能になる。

欧州委のティッセン委員(雇用・社会問題・技能・労働力の移動担当)は「障害が社会参加を妨げる障壁になったり、EU共通ルールの欠如によって障害者向け製品・サービスの国境をまたいだ取引が阻害されることがあってはならない。アクセスビリティ指令を通じ、障害者と事業者の双方に単一市場のメリットをもたらすことができると考えている」と述べた。

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