欧州自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)が8日発表した2015年のグループ新車販売台数は前年比2.0%減の993万600台となり、14年に初めて達成した1,000万台の大台を維持できなかった。販売減は02年以来で、13年ぶり。中国、ロシア、ブラジル市場の低迷のほか、ディーゼル車の排ガス不正問題が響いた。
これまで同社の急成長を支えてきた中国市場での販売台数は354万8,600台で、前年を3.4%下回った。深刻な経済危機が続くロシアとブラジルはそれぞれ36.8%減の17万4,300台、38.1%減の38万9,900台。
排ガス不正が最初に発覚した米国では1.2%増の60万7,100台とわずかながら拡大した。主力のVWブランド乗用車は4.8%減の34万9,400台と振るわなかったものの、高級ブランドのアウディが11.1%増の20万2,200台と好調で全体をけん引した。
ブランド別の販売台数をみると、乗用車ではVWブランド乗用車が4.8%減の582万3,400台に縮小。その他の主要ブランドはすべて増加した。各ブランドの実績はアウディが3.6%増の180万3,200台、シュコダが1.8%増の105万5,500台、セアトが2.4%増の40万台、ポルシェが18.6%増の22万5,100台だった。
商用車は全ブランドで減少した。小型商用車のVWブランド商用車は3.5%減の44万6,600台で、大型商用車はMANが14.7%減の10万2,500台、スカニアが4.0%減の7万6,600台だった。
一方、米環境保護局(EPA)は6日、VWが排ガス不正操作問題を受けて提示したリコール(無料の回収・修理)計画は不十分で受理できないとの見解を示した。VWはこれまで米国のリコール計画をめぐるEPAとの協議が順調に進んでいるとしてきたが、EPAによって明確に否定された格好だ。
VWのリコール計画は欧州連合(EU)では昨年12月に承認された。修理はエンジン制御用ソフトウエアの入れ替えと、10ユーロ程度の部品を追加で取り付けるだけで済む。
だが、米国では窒素酸化物(NOx)排出規制がEUより厳しいことから、修理方法のハードルも高く、これがネックとなりEPAの承認が下りないもようだ。
VWグループでは「EA189」というディーゼルエンジンの搭載車に違法ソフトがインストールされていたことが米当局の発表で昨年9月に発覚した。米国ではVW、アウディ、ポルシェの計3ブランドの約60万台が該当している。
米司法省はこの問題に絡んで4日、VWに対する民事訴訟をEPAに代わって起こしたと発表した。不正ソフトを用いてディーゼル車の排ガス値を操作していたことが米国の大気浄化法に抵触するためと説明している。違法性が確認された場合、VWは最大で約800億ドル規模の支払いを命じられる恐れがある。