アイルランド製薬大手のシャイアーは11日、米同業バクスアルタを買収することで合意したと発表した。買収額は320億ドル。シャイアーは同買収によって希少病治療薬で世界最大手の地位を強固にする。
バクスアルタは米製薬大手バクスターのバイオ医薬品部門から分離して昨年7月1日に発足した企業。血友病など希少病の医薬品に特化している。買収は現金支払いと株式交換を組み合わせた形で実施され、1株当たりの買い取り価格は前営業日(8日)の終値に基づくと45.57ドル。現金部分は18ドルとなる。
シャイアーは昨年7月、バクスアルタに約300億ドルでの買収を提案したが、バクスアルタは同社の価値を過小評価しているとして拒否してきた。シャイアーは買収額を引き上げたほか、全額株式交換方式から一部の現金支払いに切り替え、バクスアルタ取締役会の同意を取り付けた。今年半ばの買収手続き完了を予定している。
シャイアーによると、バクスアルタ買収によって希少病医薬品の売上高は約130億ドルに拡大し、同部門が売上げ全体の65%を占める。全部門の売上高は2020年までに200億ドルを超える見通しで、世界の製薬業界でトップ20に入る。バクスアルタにとっては、シャイアーの傘下に入ることでアイルランドの法人税率が適用されるため、税負担が大きく減るという利点がある。
製薬業界ではこのところ再編の動きが活発化している。特に収益力が高く、大きな成長が見込める希少病医薬品分野で相次いでおり、シャイアーは昨年、米ダイアックス、NPSファーマシューティカルズの買収で合意していた。