EUは1月29日、中国から輸入されるコンクリート補強用鋼材に対する反ダンピング(不当廉売)関税の適用を開始した。同日から6カ月の暫定措置で、関税率はメーカーによって9.2%~13%。最終的に不当廉売によって域内メーカーが損害を受けていると判断した場合、調査終了時から5年間にわたり反ダンピング措置が延長される。
欧州委員会は中国メーカーがコンクリート補強用に用いられる高強度(HFP)鋼材をEU市場で不当に安い価格で販売しているとの欧州鉄鋼連盟(EUROFER)の申立てを受け、昨年4月に調査を開始した。欧州委は29日付の官報で、2012年にはゼロだったEU市場における中国製HFP鋼材のシェアが15年3月時点で36%に上り、13年の7.9%から4倍以上に拡大したと指摘。中国から大量に輸入される安価な製品の影響で、スペインのセルサ・グループや伊グルーポ・リーバなどの欧州メーカーは「深刻な損害」を受けたと説明している。
中国の鉄鋼生産量は8億トン超と、世界全体の生産量の約半分を占めている。欧州では昨年、中国からの輸入が急増した影響で業界最大手のアルセロール・ミタルや欧州2位の印タタ・スチールなどが軒並み赤字に陥り、数千人規模の人員削減を断行。業界団体などから輸入制限を求める声が上がるなか、EUはこれまでに中国製の冷延ステンレス鋼や電炉鋼などに反ダンピング関税を課している。