ユーロ圏の16年成長率、1.7%に下方修正=欧州委冬季予測

欧州委員会は4日発表した冬季の経済予測で、ユーロ圏では緩やかな景気回復が続き、2016年の域内総生産(GDP)伸び率は15年の1.6%(予測値)を上回る1.7%になるとの見通しを示した。ただ、新興国経済の減速など外的要因に伴う下振れリスクが強まっているとして、秋季予測(昨年11月)の1.8%から0.1ポイント下方修正した。(表参照)

欧州委は原油価格の下落、ユーロ安、低金利がユーロ圏の個人消費、輸出を押し上げてきたとした上で、今年もこうしたプラス要素に支えられると指摘した。しかし、中国をはじめとする新興国の成長鈍化、世界貿易の停滞など逆風にさらされていることから、回復は緩やかなペースにとどまるとの見通しを表明。「成長率が予想を下回るリスクが強まっている」と先行きへの警戒感を示した。17年の予想成長率は秋季と同じ1.9%に据え置いた。

EU28カ国の予想成長率は16年が1.9%、17年が2%で、それぞれ秋季から0.1ポイント引き下げた。16年の予想成長率はアイルランドが4.5%で最高。主要国ではドイツが1.8%、フランスが1.3%、イタリアが1.4%、スペインが2.8%、英国が2.1%となった。ドイツとフランス、イタリア、スペインは0.1ポイント、英国は0.3ポイント下方修正された。

ギリシャについては、秋季予測で15年はマイナス1.4%と予想していたが、ゼロ成長に上方修正した。16年はEUで唯一のマイナス成長になるものの、マイナス幅は0.7%と、秋季の1.3%から引き下げた。

一方、16年のユーロ圏のインフレ率は、原油安を受けて秋季の1%から0.5%に下方修正。17年には1.5%まで上昇すると予想した。失業率については、景気回復が雇用を大きく押し上げるには至っていないものの、15年の11%(予測)から10.5%に改善すると予想。秋季の10.6%から0.1ポイント下方修正した。

ユーロ圏の財政赤字は、16年がGDP比1.9%となり、15年の2.2%から縮小すると予想した。ただ、ギリシャのほかフランス、スペイン、ポルトガルはEUの財政規律で上限となっている3%を超える。とくにフランスに関しては、17年までに3%以下に抑えることを求められているにもかかわらず、16年が3.4%、17年が3.2%と規律違反が続くことになる。

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