欧州議会は3日の本会議で、独フォルクスワーゲン(VW)による排ガス規制逃れを受けた排ガス試験方法の見直し案を承認した。2017年9月から実際に自動車が道路を走る際の排ガス量を測定する「実走行排ガス試験(RED)」を導入する。
VWが一部のディーゼルエンジン車に試験時だけ排ガス浄化機能をフル稼働させる違法ソフトを搭載していた問題を受け、EU加盟国の代表で構成する自動車技術委員会は昨年10月、新たに路上試験を実施することで合意した。ただ、路上走行時の窒素酸化物(NOx)排出量は現行規制の排出上限(走行1キロメートルあたり0.08グラム)の平均5倍に上るとされ、業界側はあらゆる環境や条件下で室内試験と同じ規制値を満たすことは技術的に困難と猛反発。このためNOxの排出上限を一時的に緩和し、新型車は17年9月(既存モデルの新車は19年9月)まで現行の規制値の2.1倍、その後20年1月(既存モデルは21年1月)までは1.5倍まで超過を認める「移行措置」が盛り込まれた。
これに対し、欧州議会環境委員会は昨年12月、より厳しい排出規制が必要との立場から、移行措置を盛り込んだ見直し案に反対する決議を採択。本会議でも環境委の決議案が採択されると路上試験の導入が大幅に遅れるとの懸念が広がるなか、欧州委員会は1月下旬、域内で販売される自動車の認証制度を抜本的に見直し、欧州委の権限で市場に出回っている車両の抜き打ち検査を実施したり、違反が見つかった場合はメーカーに制裁金を科すことなどを柱とする改革案を新たに提示。中道左派系会派の議員のうち、ディーゼル車を量産するスペインやイタリア出身者の多くが棄権または欠席したことなどにより、最終的に決議案は賛成317、反対323、棄権61の僅差で否決され、結果的に加盟国が合意していた見直し案が承認された。
欧州委のビェンコフスカ委員は路上試験の導入計画が承認されたことを歓迎したうえで、「路上走行時の排ガス量を測るポータブル測定器の技術は進化している。RED導入後の早い段階で移行措置が妥当かどうかを見極め、状況に応じてNOxの排出上限を速やかに見直す」とコメント。欧州自動車工業会(ACEA)も欧州議会での承認を「歓迎する」とのコメントを発表した。これに対し、欧州緑の党のランベール共同代表は「欧州議会は声高により強力な権限を求めているが、結局は産業界からの圧力に屈することになる。欧州議会にとって有害で悪意のある汚点がまた1つ増えた」と述べ、自動車産業によるロビー活動と一部加盟国の対応を強く批判した。