欧州委、中国製鉄鋼3品目の反ダンピング調査開始

欧州委員会は12日、新たに中国製の鉄鋼製品3品目に対する反ダンピング(不当廉売)調査を開始すると発表した。中国および欧州の鉄鋼メーカーや輸出入業者、主要ユーザーなど各方面からの情報収集を通じて実態を把握し、不当な安値輸出が行われている場合は反ダンピング措置を講じる。一方、欧州委は同日、中国およびロシア製の冷延鋼板に対して反ダンピング関税を導入することも併せて発表した。当面は6カ月の暫定措置で、関税率はメーカーによって最大26.2%となる。

中国の安価な鉄鋼製品が世界中にあふれるなか、欧州では昨年、同国からの輸入が急増した影響で業界最大手のアルセロール・ミタルや欧州2位の印タタ・スチールなどが軒並み赤字に陥り、相次いで数千人規模の人員削減を断行。業界団体などから輸入制限を求める声が上がるなか、EUは現在、中国製の鉄鋼製品37品目に反ダンピング関税を課すとともに、9件の調査を行っている。

新たに反ダンピング調査の対象となるのは中国製のシームレス管、厚板、熱延鋼板の3品目。調査は最長15カ月をかけて行われるが、その間にダンピング行為の存在が明白になった場合、調査開始から9カ月以内に期間6カ月の暫定措置として反ダンピング関税を導入することができる。最終的にダンピングによって域内メーカーが損害を受けていると判断した場合、調査終了時から5年間にわたり同措置が延長される。

一方、中国およびロシア製の冷延鋼板に関しては、欧州鉄鋼協会(EUROFER)の申立てを受けて昨年5月から欧州委が調査を進めていた。反ダンピング関税の税率は中国企業が13.8%~16%、ロシア企業が19.8%~26.2%。EUは調査プロセスの一環として、域内の税関に中国から輸入される冷延鋼板の登録を義務づけていたため、昨年12月に遡って反ダンピング関税を適用することができる。

欧州委のマルムストロム委員(通商担当)は「欧州の鉄鋼産業は多くの困難に直面している。不当な低価格の輸入品によって公正な競争が阻害され、域内のメーカーが損害を受ける事態を容認することはできない。貿易相手国が国際ルールに従うよう、EUとして可能な限りあらゆる手段を講じる」と強調した。

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