ドイツ銀行は12日、54億ドル相当の発行済み債券を買い戻すと発表した。財務基盤の弱さが指摘されるなか、債券を買い戻す余裕があることを示して市場の不安を抑え、信用回復を図る狙いがある。
計画によると、買い戻しの対象は30億ユーロのユーロ建て債権と、20億ドルのドル建て債券。自己資本を増強するために発行した偶発転換社債(CoCo債=ココ債)は含まれていない。ココ債はリスクが高い代わりに通常の社債より利回りが高く、欧州を中心に発行が増加している。ココ債を買い戻せば自己資本が減少し、財務基盤の弱さが露呈するとの判断があったとみられる。
シェンク最高財務責任者(CFO)は声明で「現在の市況を生かして債券を買い戻すことで債務負担が軽減される。また、額面を下回る価格での買戻しによって利益を得ることもできる」と強調。さらに、2015年末時点で2,150億ユーロの流動性準備がある点に触れ、資金繰りに問題がないことを改めてアピールした。
ドイツ銀行は2015年決算で過去最大の68億ユーロに上る赤字を計上しており、2月に入ると同行はココ債のクーポンを支払えない可能性があるとの憶測が金融市場に広がって株価が急落。9日までに年初からの下落率が40%を超えた。同行はこうした事態を受け、投資家と従業員向けに利払い能力や財務状況に問題はないとのメッセージを相次いで発信したが、市場では同行の経営不安説が取り沙汰されていた。
債券買戻しの発表を受け、同行の株価は12日午後までに8%上昇したが、今回の措置によって信用不安が解消に向かうかは不透明だ。本格的な経営再建に向けて経営トップの更迭や大規模なリストラ策を打ち出しているものの、人員削減や不採算事業からの撤退に伴う巨額のリストラ費用も業績に影を落としている。