EUは15日、ブリュッセルで外相理事会を開き、ベラルーシに対する制裁の大半を解除することで合意した。EUはルカシェンコ大統領による独裁政治を批判し、2006年から制裁を実施してきたが、同国の人権状況に一定の改善がみられるとして、大統領を含む個人170人と3企業に科していた資産凍結や渡航禁止の解除を決めた。
旧ソビエトのベラルーシでは1994年から「欧州最後の独裁者」と呼ばれるルカシェンコ大統領が政権を担っており、野党勢力やメディアへの弾圧が常態化していた。しかしEUや米国は、ロシアの軍事介入に伴うウクライナ東部の紛争で、ルカシェンコ氏が停戦合意に向けた交渉を仲介した点を評価。また、昨年8月にすべての政治犯を釈放したことや、10月に行われた大統領選挙でも明らかな不正や弾圧行為はみられなかったことから、EUは10月末から個人と企業に対する資産凍結や渡航禁止を一時停止。今月末の期限を前に、制裁を延長しないことを決めた。
ただし、ルカシェンコ政権による強権統治は現在も続いているとして、当面、武器禁輸は維持する。また、野党の指導者2人とジャーナリスト、実業家の計4人の失踪に関与したとされる4人に関しても、向こう1年、制裁を維持して状況を見極める。
EUのモゲリーニ外交安全保障上級代表は会議後の記者会見で、「人権や民主主義の状況が完璧に改善されたとは考えていないが、外相理はここ数年の傾向として、明らかに前進がみられるとの認識で一致した」と説明。民主的な政治活動が阻害されないか引き続き監視を続ける一方、ベラルーシとの関係改善を図る考えを示した。
一方、ベラルーシ外務省は制裁解除の決定を受け、「EUの決定を歓迎する。EUとベラルーシの関係正常化に向けた重要な一歩で、協力拡大に向けて新たな可能性が開かれる」との声明を発表した。