欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2016/2/29

EU情報

今年のEU銀行健全性審査、合否判定は行わず

この記事の要約

欧州銀行監督機構(EBA)は24日、EU内の銀行に対して行う2016年のストレステスト(健全性審査)の実施要領を発表した。対象となるのは前回を大きく下回る51行。向こう2年間の域内総生産(GDP)成長率がマイナスになると […]

欧州銀行監督機構(EBA)は24日、EU内の銀行に対して行う2016年のストレステスト(健全性審査)の実施要領を発表した。対象となるのは前回を大きく下回る51行。向こう2年間の域内総生産(GDP)成長率がマイナスになるというシナリオを設定し、それでも資本不足に陥らないかどうかをチェックするが、自己資本比率の最低基準は設けず、各銀行の合否判定も行わない。銀行にとっては緩い審査となる。

EUでは2010年から銀行のストレステストを実施し、資本不足と判定した銀行に増資を命じてきた。123行を対象として14年に実施した前回のテストでは、欧州委員会の最新経済予測に基づく「基本シナリオ」と、大きな逆風にさらされる場合を想定した「逆境シナリオ」の2つを設定。対象となる銀行の中核的自己資本比率が基本シナリオの下で8%、逆境シナリオ下で5.5%を上回ることが“合格”基準だった。

今回のテストは、資産額が300億ユーロ以上の大手銀行に限定するため、51行に絞られる。EBAは域内銀行の70%をカバーするとしているが、対象銀行は大きく減り、ポルトガルの銀行はひとつも含まれない。財務が脆弱な中小銀行も審査されない。

基本シナリオとして想定するEUのGDP伸び率は、16年がプラス2%、17年が同2.1%、18年が同1.7%。逆境シナリオでは、それぞれマイナス1.2%、マイナス1.3%、プラス0.7%となる。これに不動産価格、原油価格、為替の変動や、主要先進国や新興国の経済成長なども加味して、各銀行の健全性を審査する。審査結果は7~9月期に公表する予定だ。

ただ、これまでと異なり、各行が最低限確保するべき自己資本比率は定めないため、合否の判定はしない。これについてEBAは、今回の審査は「銀行監督のツール」として活用するのが目的と説明。欧州中央銀行(ECB)や英イングランド銀行など各国の中央銀行が対象銀行と審査結果について協議し、対応を決めるとしている。

ECBも今年、EBAの審査から外れたユーロ圏の銀行のうち60位を対象とするストレステストを独自に実施するが、結果は公表しないことになっている。