タックスヘイブン(租税回避地)での取引を暴露した通称「パナマ文書」が世界に波紋を広げるなか、欧州委員会のモスコビシ委員(経済・財務・税制担当)は7日、租税回避対策に非協力的な国・地域を列挙したEU共通の「ブラックリスト」を策定し、不正が発覚した場合は厳格な制裁を科す制度の導入を目指す方針を明らかにした。6カ月以内の法制化に向け、加盟国に早期の合意を促す。
パナマの法律事務所から流出した内部文書によって各国首脳や著名人の租税回避行動が浮き彫りになり、5日にアイスランドのグンロイグソン首相が辞任を表明したほか、親族がタックスヘイブンに資産を隠していたことが発覚したキャメロン英首相も窮地に追い込まれるなど、欧州にも影響が及んでいる。
欧州委は以前から多国籍企業による課税逃れを防止するためのルール作りを進めており、税の透明性を高める取り組みの一環として、昨年6月に租税回避対策に非協力的な域外の30カ国・地域を列挙したブラックリストを公表した。しかし、英国などの反対で欧州委の提案は承認されず、現在は各国が独自に非協力国のリストを策定して対象となる税法域の監視を行っている。モスコビシ委員はブリュッセルで記者団に対し「EU共通のブラックリストを早急に策定する必要がある。6カ月以内の法制化を目指す」と述べた。
一方、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、欧州委は域内で活動する多国籍企業に対して国ごとの収益や支払い税額などの報告を義務付ける法案に修正を加え、タックスヘイブンでの活動についても報告義務の対象とする方針を固めたもようだ。週内にも厳格化された法案が提示される見通しという。
多国籍企業に国別報告書の提出を義務付けるルールは、経済協力開発機構(OECD)が昨年10月にまとめた「税源浸食と利益移転(BEPS)行動計画」に基づき、欧州委員会が1月に打ち出した「租税回避防止パッケージ」の柱の1つ。各国当局が情報を共有して税の透明性を高め、多国籍企業が利益を上げた国で確実に納税する仕組みを確立することを最大の目的としている。具体的にはEU域内で国境をまたいで活動する多国籍企業を対象に、収益、税引き前損益、法人税の納税額、従業員数、資本金、利益剰余金、有形資産を国ごとに報告することを義務付ける。当初案ではEU域内での活動が情報開示の対象だったが、今回のスキャンダルを受けてルールをより厳格化する。