英政府は18日、同国がEUを離脱した場合は国内総生産(GDP)が15年後に6%程度落ち込むとの試算を公表した。離脱支持派は経済に悪影響はないと主張しているが、政府は「英国が恒久的に貧しくなる」と警告し、残留支持を働きかけている。
英国では6月23日にEU離脱の是非を問う国民投票が実施される。これを前に英財務省は、離脱による経済的影響に関する報告書をまとめ、18日に公表した。
同報告書は国民投票で離脱が決まった場合について、英国が◇ノルウェーなどと同じく、EUには加盟しないものの欧州経済地域(EEA)に加わる◇EUがカナダ、スイスなどと結んでいるような貿易協定を締結する◇貿易協定は結ばず、世界貿易機関(WTO)のルールに沿ってEUと取引する――という3つのシナリオを想定し、それぞれ英国の経済的損失を試算した。
これによると、カナダのような「貿易協定型」でも、英経済の柱であるサービス業は協定の対象外となるため、2030年のGDPは残留する場合と比べて6.2%落ち込む見通し。1世帯当たりのGDP縮小額は年4,300ポンド(約67万円)に上ると試算した。英経済にとって最悪の「WTO型」では、それぞれ5.4~9.5%、5,200ポンド減となる。EEAの一員としてEU市場にアクセスできたとしても、GDPは4%程度縮小し、1世帯当たり2,600ポンド減ると試算している。
EU離脱支持派は、英国が非EU加盟国となれば、企業がEUの規制に縛られず活動できるようになる利点があると強調。仮に悪影響が生じるとしても、国家主権の回復というプラス効果で相殺できるとしている。
これに対してオズボーン財務相は、今回の試算は離脱のプラス、マイナスの両面を公平に評価したもので、いずれのシナリオでも英経済が大きな打撃を被ることが確認されたと指摘。EUを離脱しながら、有利な貿易協定を結ぶことができるというのは「幻想」に過ぎないとも警告した。さらに、EUとの貿易縮小は雇用、投資にも悪影響を及ぼし、税収が年360億ポンド減るといった試算も示し、「結論は明確。EU離脱は英国の経済と家庭にとって、極めて異常な自傷行為になる」と述べ、EU残留の必要性を訴えた。