TTIP交渉で米が予防原則の見直しなど要求、グリーンピースが機密文書公開

環境保護団体グリーンピースは2日、EU・米間の環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)交渉に関する機密文書を公開した。米側はEUに対して「予防原則」の見直しなどの譲歩を求めていると指摘し、TTIPは消費者の安全や環境を損なうリスクがあると警告している。

グリーンピースのオランダ支部は同日、13章からなる計248ページの文書をオンライン上に公開した。文書の日付は4月上旬で、先月末の第13回交渉会合に先立って作成されたものだという。

EUと米国は貿易と投資に関するあらゆる障壁の撤廃を目指し、2013年7月にTTIP交渉を開始した。当初は14年末までの大筋合意を目指していたが、投資家保護の仕組み、食品や自動車などの安全基準、環境保護や個人情報保護などに関連した規制の調和などをめぐって交渉が難航。双方はオバマ大統領の任期が切れる来年1月までの妥結を目指し、次回の交渉会合が開かれる7月までに大部分の項目で合意するとの目標を掲げている。

ベルリンで記者会見したグリーンピースの通商政策担当責任者は「TTIP交渉に関する議論を刺激するために文書を公開した」と説明。文書は「交渉を中断すべきであることを示している」と語った。グリーンピースによると、米側は欧米間で異なる環境規制や、食品・医薬品・自動車などの安全基準が自由貿易の障害になる事態を想定し、人の健康や環境に対して重大なリスクがあると予想される場合、因果関係について十分な科学的証拠がない場合でも、事前に予防的措置を講じることができる「予防原則」の見直しをEU側に求めているという。

欧州委のマルムストロム委員(通商担当)は今回の事態を受け、流出した文書は交渉の過程を記録したもので、最終的な結論ではないと強調。オバマ大統領の任期中の合意と引き換えに、EUの基本理念を放棄することはありえないと強調した。

一方、米ホワイトハウスのアーネスト大統領報道官は、機密文書の正確性についてはコメントを拒否したうえで、文書が流出したことで交渉が頓挫するとは考えにくいと述べた。

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