欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2016/5/17

EU情報

欧州委がハチソンのO2買収を阻止、英最大の携帯会社誕生ならず

この記事の要約

EUの欧州委員会は11日、香港の複合企業CKハチソン・ホールディングスがスペイン通信最大手テレフォニカの英携帯電話サービス部門O2を買収する計画を認可しないと発表した。同買収が実現すると、英最大の携帯電話サービス会社が誕 […]

EUの欧州委員会は11日、香港の複合企業CKハチソン・ホールディングスがスペイン通信最大手テレフォニカの英携帯電話サービス部門O2を買収する計画を認可しないと発表した。同買収が実現すると、英最大の携帯電話サービス会社が誕生するはずだったが、欧州委は競争上の懸念から阻止を決めた。

ハチソンは昨年3月、テレフォニカからO2を102億5,000万ポンド(約140億ユーロ)で買収することで合意。O2を傘下の英携帯電話サービス会社スリーと統合する方針を打ち出していた。英携帯電話サービス市場でO2は2位、スリーは4位。統合で誕生する新会社の英市場でのシェアは40%を超え、BTグループ傘下のEEを抜いて最大手に浮上する。

これについて欧州委は10月、買収を認めると英国の大手携帯事業者は4社体制からEE、ボーダフォンを含めた3社に減り、寡占化が進んで価格上昇や通信インフラ投資の縮小といった弊害を招く恐れがあるとして、初期審査での承認を見送り、本格調査を開始していた。

ハチソンは欧州委の承認を取り付けるため、統合から5年間は通話とショートメッセージサービス(SMS)の料金を据え置く◇英事業に5年間で500万ポンドを投資する◇ネットワーク容量の一部を他社に譲渡する――といった是正策を提示した。しかし、欧州委は競争上の問題を解消するには不十分として、買収計画を認めなかった。

欧州通信市場では競争力強化に向けて再編の動きが活発化しているが、欧州委は健全な競争を維持するため合併・買収案件を厳しく審査しており、昨年9月にはノルウェーのテレノールとスウェーデンのテリアソネラがデンマークの携帯電話サービス事業を統合する計画の撤回を迫られた。

ハチソンは昨年8月、ロシア携帯電話サービス大手のビンペルコムとイタリアの携帯電話サービス事業を統合することで合意したが、これについても欧州委が難色を示しており、認可されない可能性がある。

ハチソンは同日発表した声明で、欧州委の決定について「大いに失望した」と遺憾の意を表明。「法的措置を含めたあらゆる選択肢を検討していく」と述べ、欧州司法裁判所への提訴も辞さない構えを示した。