メルコスールとのFTA交渉、仏など13カ国が提案書の交換に反対

EUとメルコスール(南米南部共同市場)の自由貿易協定(FTA)交渉をめぐり、フランスを筆頭に加盟国のおよそ半数が現時点での協議再開に難色を示しているもようだ。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、欧州委員会は週内にも市場アクセスに関して双方の提案を交換したい考えだが、EU内では「(メルコスールとのFTAが)農業分野にもたらす影響分析が不十分」として13カ国が反対を表明しているもよう。フランスは米国との環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)交渉にも難色を示しており、EUの通商政策に対して批判を強めている。

メルコスールは1995年にブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイによる関税同盟として発足した地域経済統合。2012年にベネズエラが加わり、現在の加盟国は5カ国となっている。EUは2000年にメルコスールとのFTA交渉を開始。2013年には関税削減対象品目リストの交換が予定されていたが、メルコスール加盟国で相次いで保護主義的な政策が導入されたことなどから交渉は難航を極めている。2015年のEUとメルコスールの貿易額は約930億ユーロ(EUの輸出:490億ユーロ、輸入:440億ユーロ)。EU側の輸出企業は年間およそ40億ユーロの関税を支払っている。

欧州委のマルムストロム委員(通商担当)は先月、「長年にわたるメルコスールとの交渉を前進させる準備が整ったことをうれしく思う。近く行う提案書の交換により、野心的かつ包括的な協定締結に向けた協議が再開されることになる」との声明を発表。5月中旬までに市場アクセスに関する提案書を交換したい考えを示していた。

FT紙によると、こうした欧州委の方針に対し、フランス、アイルランド、ポーランドなど13カ国が現時点での協議再開に反対を表明している。メルコスールとの貿易自由化が農業分野にどのような影響を及ぼすか、欧州委は十分に分析を行っていない、というのが反対派の主張。フランスなどは欧州委に提出した「戦略メモ」で、「この段階で提案を交換することはEU側の利益に反する」と強調している。

これに対し、FTA推進派のスペインは「提案書の交換を阻止しようとするフランスの考えは大きな誤りだ」(ガルシア=レガス商務長官)と批判。ガルシア=マルガーリョ外相も「スペインの立場はフランスと異なる。メルコスールとの交渉再開は緊急を要する課題であり、ひとたび協議がスタートすればフランスが抱いている懸念は払しょくされるはずだ」と述べている。

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