EU離脱で英経済「成長鈍化・株安に」、IMFが年次報告書で警告

国際通貨基金(IMF)は13日、英国経済に関する年次報告書を公表し、6月23日の国民投票でEU離脱が決まった場合、同国は経済成長が鈍化し、株価や住宅価格の下落に直面する恐れがあると警告した。IMFのラガルド専務理事は記者会見で、EU離脱が英経済に「かなりの悪影響、場合によっては極めて深刻な悪影響」をもたらすだろうと発言。離脱によるメリットは見当たらず、世界経済への影響についても「多大な懸念が生じている」と強調した。

IMFは報告書のなかで、EU離脱に対する懸念がすでに投資や雇用の判断に影響を及ぼしていると指摘。国民投票で実際に離脱が決まった場合、「長期にわたって先行き不透明感が強まり、金融市場のボラティリティ(価格の変動性)が急速に高まって、生産活動にも影響する」と分析。金融や不動産など主要セクターへの投資に急ブレーキがかかり、過去最大規模の経常赤字がさらに拡大する可能性があるとの見方を示している。

また、EUを離脱すればポンドが下落するため、輸出産業が一時的に恩恵を受けるものの、長期的にみれば障壁が拡大することで貿易や投資が停滞し、国際金融センターとしてのロンドンの優位性も低下するとみている。さらに経済見通しに関しては、EU離脱によって長期的には国内総生産が最大で9.5%押し下げられる可能性があるとし、英国がEUに拠出している分担金より、EU離脱によって失われる単一市場のメリットの方がはるかに大きいと指摘している。

IMFは国民投票を1週間後に控えた6月16日に、EU離脱が英経済に及ぼす影響についての詳細な分析リポートを公表する方針を示している。また、同日には恒例のマンションハウス(ロンドン市長公邸)での晩さん会で、オズボーン財務相とイングランド銀行(英中央銀行)のカーニー総裁が英国の経済状況について演説を行うことになっている。

英国のEU離脱問題をめぐっては、イングランド銀行が12日に公表した四半期ごとのインフレ報告書で、国民投票を控えて投資にブレーキがかかっていると指摘。離脱が決まればリセッション(景気後退)に陥る可能性があると警告した。経済協力開発機構(OECD)も4月末に報告書をまとめ、離脱によって英国のGDPは2020年までに3%押し下げられるとの試算を公表。英国との貿易が減少することで大陸欧州の景気も減速すると警告している。

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