欧州委員会は18日、EU加盟国の財政・経済政策に関する勧告をまとめた報告書を発表した。スペインとポルトガルはEUの財政規律に違反し、しかも赤字是正を怠っていることから制裁を発動される可能性があったが、欧州委は赤字是正期限の1年延長を決定。制裁を科すかどうかの判断も7月に先送りした。
加盟国はEUの財政規律に基づき、単年の財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に抑えることを義務付けられている。違反した国は過剰赤字是正手続きを適用され、約束した是正を行わなければ、欧州委が国内総生産(GDP)の最大0.2%に相当する罰金支払いを命じることができる。
スペインとポルトガルは規律違反が続いており、赤字是正手続きの対象国となっている。スペインの2015年の財政赤字はGDP比5.1%で、4.2%まで縮小するという目標を達成できなかった。さらに政府は、今年の是正目標を当初のGDP比2.8%から3.6%に後退させた。ポルトガルの15年の赤字はGDP比4.4%で、こちらも目標水準を超過した。
それでも欧州委は、両国は債務危機を脱したばかりで、失業率が高水準にあることを考慮。スペインでは昨年末の総選挙後の連立協議がまとまらず、政治の空白が続いており、6月26日に再選挙が実施されることもあって、制裁発動の判断を7月に延期することを決めた。赤字是正期限も1年延長し、スペインは17年、ポルトガルは16年とする。
これまでに赤字是正手続きに基づき制裁を発動した例はなく、昨年にもフランスへの制裁を見送り、赤字是正期限の2年延長を認めていた。EU内ではドイツなどから、財政規律を厳格に運用するため、両国に制裁を科すよう求める動きがあったが、欧州委は「経済、政治的にタイミングが悪い」(モスコビシ経済・財務・税制担当委員)として応じなかった。
一方、欧州委はアイルランド、スロベニア、キプロスの3カ国について、15年の赤字がGDP比3%を下回り、当面は財政規律を順守できる見通しであることから、過剰赤字是正手続きの解除を決めた。これによって同手続きの対象国はフランス、スペイン、英国、ギリシャ、ポルトガル、クロアチアの6カ国となる。