欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2016/6/20

EU情報

預金保険保証制度・金融取引税導入、協議が停滞

この記事の要約

EU加盟国は17日に開いた財務相理事会で、預金保険保証制度(EDIS)を導入する計画について協議したが、調整は進まず、具体的な協議日程を固めることはできなかった。また、金融取引税導入に関しても進展はなく、9月までに制度設 […]

EU加盟国は17日に開いた財務相理事会で、預金保険保証制度(EDIS)を導入する計画について協議したが、調整は進まず、具体的な協議日程を固めることはできなかった。また、金融取引税導入に関しても進展はなく、9月までに制度設計の合意を目指すことを確認するにとどまった。

預金保険保証制度の導入は、EU銀行同盟創設構想の最終段階で、銀行の監督、破綻処理の一元化に続くもの。銀行が破綻した場合に備えて、ユーロ圏各国が銀行の拠出による共通の預金保険基金を設立し、10万ユーロを上限に個人預金を保護することが決まっているが、制度設計は固まっていない。

欧州委が昨年11月に発表した案では、2017年に共通の預金保険基金「欧州預金保険基金」を創設し、各国が独自に運用する基金を補完する。さらに2024年から預金保証をEDISに一元化し、共通基金でユーロ圏の銀行の預金を全面的に保証する。欧州預金保険基金はユーロ圏の銀行が自国の基金に拠出する資金の一部を受け取る形で運営される。預金保険でカバーされる預金額の0.8%に相当する約430億ユーロ(2011年のデータに基づく試算)を目標に、8年間で集める。銀行の負担額は各行が抱えるリスクの度合いによって決まる。

同制度導入をめぐっては、ドイツ政府が自国で集めた資金を金融システムが脆弱なユーロ圏の他の国の預金者保護のため使うことになるとして難色を示し、前提として銀行がリスク管理を強化することを要求。具体的には自国の国債に対するエクスポージャー(大量の国債を保有することに伴うリスク)を制限するなどして、リスク軽減を図ることを求めている。

今回の理事会では、制度導入の工程表で合意したものの、ドイツの主張を考慮して、まずリスク管理強化策をまとめることを確認した。ただ、これに関する協議の開始時期については、議長総括の草案では「2018年」となっていたが、最終的に「できる限り早期に」という文言にとどまり、明記できなかった。

一方、金融取引税はリーマンショックに端を発した2008年の金融危機の元凶となった投機的な取引の抑制が目的。英国などが反対したことから、EU加盟国のうち9カ国以上が法案などに賛同すれば、それらの国だけで先行して実施できるというEU基本条約の規定に基づき、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オーストリア、ベルギー、ギリシャ、ポルトガル、スロベニア、スロバキア、エストニアの11カ国が導入することを決めた。当初は2016年1月から導入することになっていた。

しかし、具体的な課税対象、税率など詳細をめぐる協議が進まず、昨年末の財務相理事会で延期が決定。しかもエストニアが離脱を決め、導入国は10カ国となった。今回の協議でも進展はなく、9月までの合意を目指すことになった。