EU3機関が紛争鉱物規制案で基本合意、輸入業者に調査・報告を義務化

欧州議会、EU加盟国、欧州委員会の3者は15日、武装勢力の資金源となる「紛争鉱物」の取引を規制する法案の枠組みで合意した。対象となる鉱物の輸入業者に調達先や流通経路の調査を義務づけることなどが主な柱で、自主的な取り組みが中心だった欧州委の原案と比べて厳しい内容になっている。今後は新規制の導入に向けて3者間で技術的細目を詰め、年内の最終合意を目指す。

紛争鉱物とは紛争地域で産出され、その売却資金が紛争当事者の資金源となって、結果的に紛争の長期化に加担している鉱物を指す。米国のドッド・フランク法に盛り込まれた規定にみられるように、一般には中部アフリカのコンゴ民主共和国およびその周辺国で産出される金、タンタル、スズ、タングステンの4鉱物(英語の頭文字をとって「3TG」と呼ばれる)を指すが、EUの規制案は紛争地域を特定のエリアに限定せず、「武力紛争の影響を受けているすべての地域およびそのリスクが高い地域」と範囲を広げている。

欧州委は2014年3月、上記4鉱物の輸入業者に対し、経済協力開発機構(OECD)の「紛争地域及び高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュ-・ディリジェンス・ガイダンス(紛争鉱物ガイダンス)」に沿って鉱物の調達先と流通経路を調査することを求め、輸入した鉱物が紛争地帯に由来するものではないことを任意で自己認証する制度の導入を提案した。ドッド・フランク法は紛争鉱物を使用している製造業者(上場企業のみ)にデュ-・ディリジェンスを求めているのに対し、欧州委のアプローチは輸入業者を主な規制対象としている点が特徴だが、これは鉱物の原産地に関する正確な情報を入手できる最終段階は精錬所および精製所であり、それらと直接取引を行う輸入業者への規制が最も効果的との判断によるものだ。

しかし、欧州議会では企業による自主的な取り組みでは不十分だとの声があがり、昨年5月、すべての輸入業者に対してOECDのガイダンスに沿ったデュ-・ディリジェンスの実施と、各国当局への報告および情報開示を義務づける内容の修正案を採択。欧州委の提案を支持する加盟国と欧州議会の間で意見調整が続いていた。

3者協議ではより厳格な規制を求める欧州議会の主張が通り、紛争鉱物を扱うすべての輸入業者に対して法的拘束力のある義務を課すことで一致。さらに、サプライチェーン全体で「責任ある鉱物調達」を実現するため、4鉱物を使用した製品を生産・販売する事業者のうち、従業員500人以上の大企業に対しても、鉱物の調達先などに関する情報提供を義務づけることで合意した。ただし、新たな規制に伴う企業側の負担を考慮して、輸入量がごく少量の業者については調査および報告義務を免除するほか、再生金属やすでに域内に輸入されている在庫分については規制の対象から除外するなどの例外措置を盛り込んだ。

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