インベブが並行輸入阻害か、欧州委が調査開始

欧州委員会は6月30日、ビール世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ、本社ベルギー)が近隣諸国から安価な自社製品が流入するのを不当に妨げ、自由な競争を阻害している可能性があるとして、本格調査を開始したと発表した。EU域内の内外価格差を利用した「並行輸入」を制限する商慣行が、EU競争法で禁止された市場支配的地位の乱用にあたる可能性があるという。最終的に競争法違反と認定された場合、ABインベブは多額の制裁金を科されるおそれがある。

欧州委はEU加盟国の規制当局や欧州議会、消費者団体などから、多くの食料品や飲料類の販売価格が国によって大きく異なり、自社製品が安価で販売されている国からの並行輸入を制限するメーカー側の商慣行がこうした弊害を引き起こす一因になっているとの苦情が寄せられたことを受け、ABインベブに対する調査に乗り出した。

欧州委はABインベブがベルギーのビール市場における支配的地位を利用して、オランダやフランスなど、自社製品が同国より安く販売されている近隣諸国からの並行輸入を意図的に阻害したとの疑いを抱いている。今後の調査では同社が並行輸入を阻止するため、市場ごとに缶やびんのパッケージデザインを変えて他の国で販売しにくいようにしたり、ベルギー以外に拠点を置く小売業者に対し、リベート(一定期間の取引量や取引金額に応じてメーカーが支払う代金の割戻し)の支払いや人気商品の供給を制限するといった差別的扱いがなかったかどうかが焦点となる。

欧州委のベステアー委員(競争政策担当)は声明で「ABインベブがベルギーのビール市場で強固なポジションを確立していること自体に問題はないが、反競争的な商慣行により単一市場で自由な取引が制限されることがあってはならない。近隣諸国からの安価な輸入品を市場から閉め出すことは、消費者の利益に反する反競争的行為だ」と指摘した。

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