産業ロボット大手の独クーカは6月28日、中国家電大手・美的集団による株式公開買い付け(TOB)を支持する意向を表明し、株主にTOB受け入れを呼びかけた。美的集団と協議を行った結果、同社からクーカと取引先の知財権を侵害しないといった確約を取り付けたことから、買収受け入れを決めた。
美的集団はTOBを同月16日に開始。クーカ1株につき現金115ユーロを支払う。出資比率を30%超に引き上げることを目指している。買い付け期間は7月15日まで。
クーカは同提案を評価するため、銀行4行に客観的な意見を要請。4行ともTOB価格を適正と判断した。
クーカはドイツの産学官が一体となって推し進める「インダストリー4.0」の中核的な企業の1社と目されていることから、美的集団に買収されると最先端技術が流出するとの懸念が持たれている。また、インダストリー4.0では異なる企業がネットワークでつながり情報が共有されることから、クーカ製品を通してこれらのデータに美的集団がアクセスすることも懸念されている。
両社はこれを踏まえ、クーカのノウハウと顧客およびサプライヤーの秘密情報を保存するデータバンクついて◇美的集団が他の場所に移転する◇美的集団をはじめとする第3者がアクセスする――の禁止を取り決めた。
このほか美的集団は、クーカに対して◇取締役会と監査役会の独立性を保証する◇事業拠点と雇用を維持する◇経営戦略を支持・支援する◇会社法上の再編を行わない◇支配契約を結ばず上場廃止も行わない――なども確約した。協定は2023年まで有効。