欧州委員会は5日、EUとカナダの包括的経済貿易協定(CETA)について、最終的な批准手続きで加盟国議会の承認を求める方針を明らかにした。従来は閣僚理事会と欧州議会の承認で十分との立場だったが、英国のEU離脱などを背景に、欧州委への権限集中に対して批判が高まるなか、各国議会の承認を求める加盟国の声に配慮したかたち。ただ、すべての国で議会承認を得るにはかなりの時間を要するとみられるため、欧州委は閣僚理と欧州議会の承認を経て、暫定的に協定を発効させることを提案している。
EUとカナダは2009年にCETA交渉を開始し、14年に協定案の内容で基本合意。今年2月には投資をめぐる企業と国家の間の紛争を処理する二審制の裁判制度を導入することでも合意し、年内の署名、17年の発効を目指している。欧州委は10月に予定されるEU・カナダ首脳会議でCETAに署名したい考えで、欧州議会と加盟国に対して速やかな承認を求めている。
欧州委のユンケル委員長は声明で「カナダとの貿易協定はEUにとって最善かつ最も進歩的な協定であり、できるだけ早期に発効させたいと考えている。欧州委は(批准手続きについて)法的な検討を行い、各国の首脳や議会の意見も聞いてきた」と説明。マルムストロム委員(通商担当)は「法的観点から厳格に解釈すると、貿易協定の最終的な決定権はEUにあると考えているが、閣僚理事会の政治的状況は明確だ。すべての消費者と企業に利益をもたらす協定の早期発効を可能にするため、混合型のアプローチ(各国議会の承認を批准の条件とする一方、暫定的な発効を認めるシステム)を提案する必要があると判断した」とつけ加えた。
CETAはEUが主要8カ国(G8)と結ぶ初のFTAとなる。EUにとってカナダは12番目、カナダにとってEUは米国に次ぐ2番目の貿易相手で、CETAはEUが主要8カ国(G8)と結ぶ初のFTAとなる。CETAが発効すれば99%以上の貿易品目で関税が撤廃され、欧州委はEU・カナダ間の貿易額が23%(約260億ユーロ)増加し、EUの域内総生産(GDP)も年間120億ユーロ拡大すると試算している。