EU加盟国は12日に開いた財務相理事会で、欧州委員会の勧告に基づき、スペインとポルトガルを財政規律違反と正式認定した。これを受けて欧州委は、両国への制裁手続きに入る。
EUの財政規律では、各国に単年の財政赤字をGDP比3%以内に抑えることを義務付けている。違反したユーロ参加国は過剰赤字是正手続きを適用され、是正を怠れば国内総生産(GDP)の最大0.2%に相当する罰金の支払いを命じられる可能性がある。これまで制裁が発動された例はない。
スペインとポルトガルは、09年から過剰赤字是正手続きを適用されている。欧州委は7日、両国が約束した是正を怠ったとして、規律違反と認定。EU財務相理に違反を正式に認定するよう勧告していた。
財務相理の決定により、欧州委は20日以内に具体的な制裁を提案する。財務相理は10日以内に同提案を承認するかどうかを決めることになる。
一方、財政規律に違反した場合も、対象国が景気の急激な悪化など例外的な状況に陥っていると判断した場合は、制裁が猶予されるという規定がある。また、両国が新たな財政再建策を提示し、規律順守の姿勢をみせれば猶予、減額の可能性が出てくる。スペインとポルトガルは欧州委が制裁を提案してから10日以内に制裁免除を要求できる。
同問題をめぐっては、EUは英国の離脱が決定した直後だけに、加盟国の結束維持を重視し、両国への厳しい制裁を見送るとの観測が浮上している。ただ、財政規律の厳格な運用を主張するドイツ、オランダなどに考慮する必要もあり、罰金を免除する代わりに補助金交付を停止するという妥協策で落ち着くとの見方も出ている。