仏電力最大手のフランス電力公社(EDF)は7月28日に開いた取締役会で、英南西部のヒンクリーポイントに原子力発電所を建設する大型事業への投資を最終承認した。総額180億ポンド(約214億ユーロ)に上る同事業をめぐっては、リスクが大きすぎるという反対論も根強く、取締役会の採決では僅差で実施が決まった。
同事業では仏原子力会社アレバが開発した欧州加圧水型原子炉(EPR)2基を設置する。出力は1,650メガワットで、英国の電力需要の約7%を賄う能力を持つ。英国での原発新設は1995年以来約20年ぶり。福島第1原発の事故後に欧州で建設される初の原発となる。
EDFは2013年、英政府と同原発建設で合意。中国の広核集団(CGN)との共同出資で同事業を進めることになっていた。ただ、EDFは業績が振るわず、昨年末時点で374億ユーロの債務を抱えていることなどから、ヒンクリーポイント原発への巨額投資を懸念する声があり、同社の労組は慎重な判断を求めていた。
ロイター通信によると、取締役18人のうち1人が同事業に反発し、採決直前に辞任。残る17人で採決した結果、賛成10人、反対7人で実施が決まった。労組を代表する取締役は6人全員が反対に回った。
英政府は原発を含む多くの発電所で耐用期限が迫っており、新たな電力供給源の確保が急務となっていることから同計画に積極的だ。しかし、同原発に35年間にわたって電力固定価格買い取り制度(FIT)を適用し、取り決めた価格が電力卸売市場の価格を下回った場合に政府が差額を補填するという方針をめぐり、1メガワット時当たり92.5ポンドという取り決め価格が高すぎ、公的負担が膨らむとして批判する動きが国内にある。EDFは予定通りに2019年半ばの着工を目指すとしているが、英政府は28日、同事業実施の最終判断を先送りし、初秋に決定する意向を表明した。