欧州委員会は5日、地上デジタル放送への移行に伴うコスト負担の軽減を目的としたスペイン政府の民放テレビに対する支援計画は、特定の企業に対する公的支援を制限したEUの国家補助規定に違反するとの判断を下した。ただ、民放各社はすでに自力でデジタル移行を完了しており、実際に公的資金が投入されることはなかったため、補助金返還などの罰則は免れた。
スペイン政府は地上テレビ放送の完全デジタル化を進めるうえで、アナログ放送停止までの移行期間についてはアナログとデジタルの両方式による同時放送の実施を事業者に義務づけた。デジタル移行の過程でテレビが視聴できなくなる事態を防ぐための措置だが、事業者にとっては新たな費用負担が生じる。そこで政府は国営放送を含む地上波テレビ局に対する支援策をまとめ、2011年に欧州委に計画を届け出た。欧州委は12年4月に国家補助規定との整合性について本格調査を開始。その後、スペイン側が国営放送を支援の対象から除外したため、民放テレビに対する支援計画に的を絞って調査を進めていた。
欧州委は完全デジタル化に向けた公的支援の対象が地上波テレビ局に限られており、ケーブルテレビや衛星放送、通信事業者のIPTVサービスは支援の対象になっていない点を問題視し、こうした措置は技術的中立性の原則に反すると指摘。さらに、スペイン側は市場分析などを通じて支援計画の正当性を裏付ける根拠を示すこともしなかったとし、地上波テレビに対する優遇措置によって他のプラットフォーム事業者は競争上、不利な立場に置かれたと結論づけた。